滅私できる対象はいくつかも持ったほうがいい
湯山 一方で、今、草食化などといわれていて、表面的にはないことになっていそうな男の暴力性は怖い、私は。彼らのフラストレーションは、簡単に戦争につながる熾火(おきび)のように思える。結局、モテてお金も持っていて、人間的に尊敬されるようなスーパーな存在になれない大部分の男の人たちにどう希望を与えていくかが問題なのかなって最近考えます。ニートだったりとか、殺人を起こした人を見ると、負けた男が格好いいという物語があるのかなって思っちゃう。社会がそれをどう作れるのかって。
植島 ちょうどいまが端境期だから、何の価値がいちばん上かっていうのがわからなくなりつつある。だからニートでも引きこもりでも、ゲームが好きっていうのは、すごく大切な才能だと思うわけ。ゲームが「上手い」じゃなく、「好き」っていうのがね。昔、パソコンゲームが出た頃、20くらいの最高に面白いゲームを持ったら、これで一生遊べるからだいじょうぶって宣言した人もいたぐらいで、徹底して遊べて楽しめれば、ぼくはそれが大事な才能だと思う。昔の高橋名人みたいなのじゃなくてもいい。
湯山 そうなんです。滅私奉公の考え方は早く捨てたほうがいい。滅私って、じつはゲームと似てるんですよ。ゲームって対象に対して自分をなくしちゃって、真っ白になってやっちゃうってことが楽しい。でもね、滅私した対象が面白ければいいんだけど、それがブラック企業だったりとかさ、訳のわからない企業だった時に、その人の生活を滅ぼすんだよね。滅私の対象は絶対見つけたほうがいいし、その滅私も1個だけじゃなくて4つぐらいあったほうがいい。寿司なんかは、私の滅私。快楽で滅私しちゃうっていうのは、1個だけって考えないほうがいいよね。滅私は思考停止をもたらしますからね。滅私のつらいところは、滅私する対象が揺らいだらそこで人生がすべて崩れちゃうところ。会社が盤石だった時代ならばともかく、これはヤバいし、日本の大企業は滅私しないと出世できないところもあるし。
植島 ぼくがいま人類学調査をしている世界中の国は、年収100万ぐらいでけっこう中流の上だからね。日本で普通にコンビニでバイトすれば、100万ぐらいは貯められるでしょう。それで中流の上だからね。そうしたら、もうあとは、自分の好きなことやればいいじゃない。それを人から非難されたり、もっと向上心持てとか言われたって、それはもうしょうがないことで、「ぼくはそんなものまったく求めてません」でいいんじゃないかな。
湯山 女性にしてもね、こんな平等社会になったとしても、まだ自分を導いてくれて、なおかつ人格高潔、ルックスもいい、漫画『エースをねらえ!』の宗方コーチみたいなのを求めてる。いないとわかってるのに、まだ見つけるかなって。それはもうやめて、女の人の見方も変えなきゃいけない。両方ですよね。
植島 ぼくたちだけでもまず、とことん遊びましょう。
湯山 混浴ですかね(笑)。
植島 でもね、関西、あんまり混浴がないんですよ。
湯山 海外は? バリ島があるじゃないですか。まあ、あそこは水着つけなきゃならないけど。
植島 バリ島いいね。こちらの近辺でも、栃木とか群馬も混浴のメッカだから、一時間で東京から行けるしね。
湯山 それと、麻雀ですかね。実は私まだやったことなくて、しかし、これ絶対に長い老後の助けになると踏んでいるんで、ぜひ、プロ顔負けの植島先生に教えていただきたい。
(終わり)