1. Home
  2. 生き方
  3. 気持ちのいいことが、好き。「“官能”と“快楽”の回路を開くために」
  4. 最終回 ぼくたちはとことん遊び尽くしたい

気持ちのいいことが、好き。「“官能”と“快楽”の回路を開くために」

2014.02.08 公開 ポスト

特集<気持ちのいいことが、好き。>

最終回 ぼくたちはとことん遊び尽くしたい植島啓司/湯山玲子

滅私できる対象はいくつかも持ったほうがいい

湯山 一方で、今、草食化などといわれていて、表面的にはないことになっていそうな男の暴力性は怖い、私は。彼らのフラストレーションは、簡単に戦争につながる熾火(おきび)のように思える。結局、モテてお金も持っていて、人間的に尊敬されるようなスーパーな存在になれない大部分の男の人たちにどう希望を与えていくかが問題なのかなって最近考えます。ニートだったりとか、殺人を起こした人を見ると、負けた男が格好いいという物語があるのかなって思っちゃう。社会がそれをどう作れるのかって。

植島 ちょうどいまが端境期だから、何の価値がいちばん上かっていうのがわからなくなりつつある。だからニートでも引きこもりでも、ゲームが好きっていうのは、すごく大切な才能だと思うわけ。ゲームが「上手い」じゃなく、「好き」っていうのがね。昔、パソコンゲームが出た頃、20くらいの最高に面白いゲームを持ったら、これで一生遊べるからだいじょうぶって宣言した人もいたぐらいで、徹底して遊べて楽しめれば、ぼくはそれが大事な才能だと思う。昔の高橋名人みたいなのじゃなくてもいい。

湯山 そうなんです。滅私奉公の考え方は早く捨てたほうがいい。滅私って、じつはゲームと似てるんですよ。ゲームって対象に対して自分をなくしちゃって、真っ白になってやっちゃうってことが楽しい。でもね、滅私した対象が面白ければいいんだけど、それがブラック企業だったりとかさ、訳のわからない企業だった時に、その人の生活を滅ぼすんだよね。滅私の対象は絶対見つけたほうがいいし、その滅私も1個だけじゃなくて4つぐらいあったほうがいい。寿司なんかは、私の滅私。快楽で滅私しちゃうっていうのは、1個だけって考えないほうがいいよね。滅私は思考停止をもたらしますからね。滅私のつらいところは、滅私する対象が揺らいだらそこで人生がすべて崩れちゃうところ。会社が盤石だった時代ならばともかく、これはヤバいし、日本の大企業は滅私しないと出世できないところもあるし。

植島 ぼくがいま人類学調査をしている世界中の国は、年収100万ぐらいでけっこう中流の上だからね。日本で普通にコンビニでバイトすれば、100万ぐらいは貯められるでしょう。それで中流の上だからね。そうしたら、もうあとは、自分の好きなことやればいいじゃない。それを人から非難されたり、もっと向上心持てとか言われたって、それはもうしょうがないことで、「ぼくはそんなものまったく求めてません」でいいんじゃないかな。

湯山 女性にしてもね、こんな平等社会になったとしても、まだ自分を導いてくれて、なおかつ人格高潔、ルックスもいい、漫画『エースをねらえ!』の宗方コーチみたいなのを求めてる。いないとわかってるのに、まだ見つけるかなって。それはもうやめて、女の人の見方も変えなきゃいけない。両方ですよね。 

植島 ぼくたちだけでもまず、とことん遊びましょう。

湯山 混浴ですかね(笑)。

植島 でもね、関西、あんまり混浴がないんですよ。

湯山 海外は? バリ島があるじゃないですか。まあ、あそこは水着つけなきゃならないけど。

植島 バリ島いいね。こちらの近辺でも、栃木とか群馬も混浴のメッカだから、一時間で東京から行けるしね。

湯山 それと、麻雀ですかね。実は私まだやったことなくて、しかし、これ絶対に長い老後の助けになると踏んでいるんで、ぜひ、プロ顔負けの植島先生に教えていただきたい。
(終わり)

{ この記事をシェアする }

気持ちのいいことが、好き。「“官能”と“快楽”の回路を開くために」

バックナンバー

植島啓司

1947年東京生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学専攻)博士課程修了。シカゴ大学大学院に留学後、NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。著書に『快楽は悪か』(朝日新聞出版)、『男が女になる病気』(朝日出版社)、『賭ける魂』(講談社現代新書)、『聖地の想像力』、『偶然のチカラ』、『世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く』、『生きるチカラ』『日本の聖地ベスト100』(いずれも集英社新書)、『熊野 神と仏』(原書房、共著)、監訳『図説 聖地への旅』(原書房)など。

湯山玲子

著述家、プロデューサー。日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。著書に『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『四十路越え!』(角川文庫)、『女装する女』(新潮新書)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)、『快楽上等!』(上野千鶴子さんとの共著。幻冬舎)、『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(KADOKAWA)などがある。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP