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雅子さまの笑顔

2020.05.15 公開 ポスト

皇族女子が「責任ある立場」に就く日矢部万紀子(コラムニスト)

2019年12月1日に18歳のお誕生日を迎えられた愛子さま(宮内庁提供)

新型コロナウイルスの感染拡大で、4月19日に予定されていた「立皇嗣の礼」は延期。その後に予定されていた、安定的な皇位継承をめぐる議論の取りまとめも先送りになりました。ただ非公式に行われていた識者ヒアリングは終了し、今後、女性・女系天皇、旧皇族の皇籍復帰、「女性宮家」創設などが論点として整理・検討される予定です。雅子さまと皇室をめぐり自問自答を積み重ねて綴った矢部万紀子さんの『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』。皇位継承問題について矢部さんがたどりついた答えとは?

*   *   *

内親王にも経済力が要る

三浦しをんさんはカッコいい。スカッと明るく、思うことを言葉にする。

原武史さんとの共著『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』で、眞子さまの問題にも独自のアプローチをする。なぜ男性の職業や稼ぎだけが問題になるのか、そこにこだわっている。

内親王の結婚が、専業主婦になることを前提としているから、「ふさわしいお相手」の話になる。それって時代遅れだ。そのことを三浦さんは、こう表現する。

「『売れないロックミュージシャンと結婚したい内親王』とかが出てきたら、どうするんでしょうか」

三浦さんの考えは、いたってシンプル。男女を問わず、好きな相手と結婚する。稼いで家計を維持する。いろいろな事情でそれができないなら、公的扶助を受ける。その考えの延長線上として、内親王は結婚後、何かあった場合、皇室に戻れるのかと原さんに聞く。

原さんは「いったん臣籍降下したあと皇族に復帰した宇多天皇のような前例はあるが、ふつうは戻れませんね」と専門家らしく答える。三浦さんは、戻れないならなおさら、女性に経済力がなければどうしようもないではないかと憤る。

上皇陛下の長女の黒田清子さんが伊勢神宮祭主という仕事に就いていると、原さんが教える。伝統的に内親王がしてきた役割だ、と。

でも、そのポストに就けるのは一人ではないかと、三浦さん。内親王をめぐる「仕組み」を問題にしている。だから、こんなふうに言い切る。

「内親王だって自分のやりたい仕事をしたらいいのに。好きな人と自由に結婚するためにも。実力で一般企業に入社しても、きっとコネとか言われちゃうんだろうけど、そんなの気にしなきゃいいのです」

三浦さんは、働くことを楽しいと思っている。それは自分も内親王も同じだと、はなから考えている。それが三浦しをん流の、皇族女子を自分の問題ととらえる方法だ。三浦さんのこの言葉で、私は眞子さまのある写真を思い出した。

三浦さんの想定とは違うとは思うが、眞子さまは働いている。日本郵便と東京大学総合研究博物館が協働で運営する博物館「インターメディアテク」の特任研究員をしているのだ。そこでの勤務を終えた眞子さまが、迎えの車に乗るところを「女性自身」(2019年7月9日号)が撮った。

眞子さまはサマーセーターを着て、メガネをかけていた。ショルダーバッグのほかにもう一つ、手提げカバン。日によってメガネをかけたり、コンタクトレンズにしたり。眞子さまはどこの職場にもいる、働く女子なのだと思った。ただし写真の眞子さま、やや顔が険しい。

眞子さまには仕事があって、公務もある。それを楽しいと感じているだろうか。そんなことを考えた。

関連書籍

矢部万紀子『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』

弾けるような笑顔、華やかなファッション、外国賓客に対する堂々たる振る舞いと、日々輝きを増す皇后雅子さま。しかし、一九九三年のご結婚から今日までの道のりは、長く苦しいものだった。外交官から皇室へと新しい人生を選択したものの、男子出産の重圧にさらされ、生きる意味を見失った日々。そこからどう立ち直ってこられたのか?失わなかった「普通の人としての感覚」とは?雅子さま、そして愛子さまほか女性皇族にとって生きやすい皇室を考えながら、誰にとっても生きやすい社会のあり方を問う、等身大の皇室論

矢部万紀子『美智子さまという奇跡』

一九五九(昭和三四)年、初の民間出身皇太子妃となった美智子さま。その美しさと聡明さで空前のミッチーブームが起き、皇后即位後も、戦跡や被災地を幾度となく訪れ、ますます国民の敬愛を集める。美智子さまは、戦後の皇室を救った“奇跡”だった。だが、今私たちの目に映るのは、雅子さまの心の病や眞子さまの結婚問題等、次の世代が世間にありふれた悩みを抱えている姿。美智子さまの退位と共に、皇室が「特別な存在」「すばらしい家族」である時代も終わるのか? 皇室報道に長く携わった著者による等身大の皇室論。

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雅子さまの笑顔

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矢部万紀子 コラムニスト

1961年三重県生まれ。コラムニスト。83年朝日新聞社に入社し、記者に。宇都宮支局、学芸部を経て、「アエラ」、経済部、「週刊朝日」に所属。94年、95年、「週刊朝日」で担当したコラムをまとめた松本人志『遺書』『松本』(ともに朝日新聞出版)がミリオンセラーになる。「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理をつとめたのち、書籍編集部で部長をつとめ、2011年、朝日新聞社を退社。シニア雑誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長となる。17年に株式会社ハルメクを退社し、フリーランスで各種メディアに寄稿している。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)がある。

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