新型コロナウイルスの感染拡大で、4月19日に予定されていた「立皇嗣の礼」は延期。その後に予定されていた、安定的な皇位継承をめぐる議論の取りまとめも先送りになりました。ただ非公式に行われていた識者ヒアリングは終了し、今後、女性・女系天皇、旧皇族の皇籍復帰、「女性宮家」創設などが論点として整理・検討される予定です。雅子さまと皇室をめぐり自問自答を積み重ねて綴った矢部万紀子さんの『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』。皇位継承問題について矢部さんがたどりついた答えとは?
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内親王にも経済力が要る
三浦しをんさんはカッコいい。スカッと明るく、思うことを言葉にする。
原武史さんとの共著『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』で、眞子さまの問題にも独自のアプローチをする。なぜ男性の職業や稼ぎだけが問題になるのか、そこにこだわっている。
内親王の結婚が、専業主婦になることを前提としているから、「ふさわしいお相手」の話になる。それって時代遅れだ。そのことを三浦さんは、こう表現する。
「『売れないロックミュージシャンと結婚したい内親王』とかが出てきたら、どうするんでしょうか」
三浦さんの考えは、いたってシンプル。男女を問わず、好きな相手と結婚する。稼いで家計を維持する。いろいろな事情でそれができないなら、公的扶助を受ける。その考えの延長線上として、内親王は結婚後、何かあった場合、皇室に戻れるのかと原さんに聞く。
原さんは「いったん臣籍降下したあと皇族に復帰した宇多天皇のような前例はあるが、ふつうは戻れませんね」と専門家らしく答える。三浦さんは、戻れないならなおさら、女性に経済力がなければどうしようもないではないかと憤る。
上皇陛下の長女の黒田清子さんが伊勢神宮祭主という仕事に就いていると、原さんが教える。伝統的に内親王がしてきた役割だ、と。
でも、そのポストに就けるのは一人ではないかと、三浦さん。内親王をめぐる「仕組み」を問題にしている。だから、こんなふうに言い切る。
「内親王だって自分のやりたい仕事をしたらいいのに。好きな人と自由に結婚するためにも。実力で一般企業に入社しても、きっとコネとか言われちゃうんだろうけど、そんなの気にしなきゃいいのです」
三浦さんは、働くことを楽しいと思っている。それは自分も内親王も同じだと、はなから考えている。それが三浦しをん流の、皇族女子を自分の問題ととらえる方法だ。三浦さんのこの言葉で、私は眞子さまのある写真を思い出した。
三浦さんの想定とは違うとは思うが、眞子さまは働いている。日本郵便と東京大学総合研究博物館が協働で運営する博物館「インターメディアテク」の特任研究員をしているのだ。そこでの勤務を終えた眞子さまが、迎えの車に乗るところを「女性自身」(2019年7月9日号)が撮った。
眞子さまはサマーセーターを着て、メガネをかけていた。ショルダーバッグのほかにもう一つ、手提げカバン。日によってメガネをかけたり、コンタクトレンズにしたり。眞子さまはどこの職場にもいる、働く女子なのだと思った。ただし写真の眞子さま、やや顔が険しい。
眞子さまには仕事があって、公務もある。それを楽しいと感じているだろうか。そんなことを考えた。
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