「務め」を果たす仕組みとしての「女性宮家」
整理しよう。清子さまの抑制的な言葉からわかったのは、「結婚退職」が前提である皇室という組織の問題点だ。女性であるがゆえに、責任ある仕事を引き受けにくい。
この問題の改善に、「女性宮家」は有効だ。結婚退職しないでよい。そういう立場になってもらう、そのための「女性宮家」。その仕組みを作った上で、責任ある仕事を引き受けていただく。これなら、すごくすっきりする。
だんだんとわかってきたのだが、皇室のさまざまな問題を解決するにあたり、皇族女子が「利用されてる感」、ないだろうか。
「公務の担い手」または「皇位継承者」が足りなくなっているから「女性宮家を」と言われている。でも、「足りないから来て」と言われて行くって、うれしくない。「こうしてほしいから来て」なら、「何、何、何をする?」と、喜んで行く。私は、そう思う。
皇室における「人員減少」は明らかだ。だから「対策」も必要だろう。だけど何か仕組みを作るなら、目先の対策だけでなく、「目的」も必要。それだけのことだし、そうなれば「女性宮家」も自分の問題として考えられる。そういうことが言いたいのだが、わかっていただけるだろうか。
そして、皇族女子が責任ある仕事をするための仕組みとして「女性宮家」を作るなら、「男系男子」はたぶん、無意味化してくるはずだ。男女ともが責任を担うという時、「でも、男子が優先で」とすることに意味はない。
最後にもう一度、『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』を紹介する。
上皇さまの2016年(平成28年)8月の「おことば」が話題になった。退位の意向をにじませたビデオメッセージで、「国民の理解を得られることを、切に願っています」で終わる。原武史さんと三浦しをんさんが語ったのは、その直前の段落のことだ。
〈これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。〉
原さんは、天皇(当時)がここで「血統」には言及していないことに注目し、こう述べる。
「象徴としての務めを果たすことができる天皇であれば、血統は二の次でよいと読むこともできるわけです」
三浦さんは、「ほんとだ、女性・女系天皇でもいいと思われている感じがしますね」と受けた。
上皇さまが使った「務め」という言葉。清子さまは「お務め」と表現していた。責任ある仕事を引き受けるのに、男も女もない。すごくシンプルだ。
「継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきた」清子さまを経て、「責任ある立場に皇族女子が就く。
それが愛子さまであっても、ちっともおかしくない。