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雅子さまの笑顔

2020.05.15 公開 ポスト

皇族女子が「責任ある立場」に就く日矢部万紀子(コラムニスト)

「務め」を果たす仕組みとしての「女性宮家」

整理しよう。清子さまの抑制的な言葉からわかったのは、「結婚退職」が前提である皇室という組織の問題点だ。女性であるがゆえに、責任ある仕事を引き受けにくい。

この問題の改善に、「女性宮家」は有効だ。結婚退職しないでよい。そういう立場になってもらう、そのための「女性宮家」。その仕組みを作った上で、責任ある仕事を引き受けていただく。これなら、すごくすっきりする。

だんだんとわかってきたのだが、皇室のさまざまな問題を解決するにあたり、皇族女子が「利用されてる感」、ないだろうか。

「公務の担い手」または「皇位継承者」が足りなくなっているから「女性宮家を」と言われている。でも、「足りないから来て」と言われて行くって、うれしくない。「こうしてほしいから来て」なら、「何、何、何をする?」と、喜んで行く。私は、そう思う。

皇室における「人員減少」は明らかだ。だから「対策」も必要だろう。だけど何か仕組みを作るなら、目先の対策だけでなく、「目的」も必要。それだけのことだし、そうなれば「女性宮家」も自分の問題として考えられる。そういうことが言いたいのだが、わかっていただけるだろうか。

そして、皇族女子が責任ある仕事をするための仕組みとして「女性宮家」を作るなら、「男系男子」はたぶん、無意味化してくるはずだ。男女ともが責任を担うという時、「でも、男子が優先で」とすることに意味はない。

最後にもう一度、『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』を紹介する。

上皇さまの2016年(平成28年)8月の「おことば」が話題になった。退位の意向をにじませたビデオメッセージで、「国民の理解を得られることを、切に願っています」で終わる。原武史さんと三浦しをんさんが語ったのは、その直前の段落のことだ。

〈これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。〉

原さんは、天皇(当時)がここで「血統」には言及していないことに注目し、こう述べる。

「象徴としての務めを果たすことができる天皇であれば、血統は二の次でよいと読むこともできるわけです」

三浦さんは、「ほんとだ、女性・女系天皇でもいいと思われている感じがしますね」と受けた。

上皇さまが使った「務め」という言葉。清子さまは「お務め」と表現していた。責任ある仕事を引き受けるのに、男も女もない。すごくシンプルだ。

「継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきた」清子さまを経て、「責任ある立場に皇族女子が就く。

それが愛子さまであっても、ちっともおかしくない。

関連書籍

矢部万紀子『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』

弾けるような笑顔、華やかなファッション、外国賓客に対する堂々たる振る舞いと、日々輝きを増す皇后雅子さま。しかし、一九九三年のご結婚から今日までの道のりは、長く苦しいものだった。外交官から皇室へと新しい人生を選択したものの、男子出産の重圧にさらされ、生きる意味を見失った日々。そこからどう立ち直ってこられたのか?失わなかった「普通の人としての感覚」とは?雅子さま、そして愛子さまほか女性皇族にとって生きやすい皇室を考えながら、誰にとっても生きやすい社会のあり方を問う、等身大の皇室論

矢部万紀子『美智子さまという奇跡』

一九五九(昭和三四)年、初の民間出身皇太子妃となった美智子さま。その美しさと聡明さで空前のミッチーブームが起き、皇后即位後も、戦跡や被災地を幾度となく訪れ、ますます国民の敬愛を集める。美智子さまは、戦後の皇室を救った“奇跡”だった。だが、今私たちの目に映るのは、雅子さまの心の病や眞子さまの結婚問題等、次の世代が世間にありふれた悩みを抱えている姿。美智子さまの退位と共に、皇室が「特別な存在」「すばらしい家族」である時代も終わるのか? 皇室報道に長く携わった著者による等身大の皇室論。

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矢部万紀子 コラムニスト

1961年三重県生まれ。コラムニスト。83年朝日新聞社に入社し、記者に。宇都宮支局、学芸部を経て、「アエラ」、経済部、「週刊朝日」に所属。94年、95年、「週刊朝日」で担当したコラムをまとめた松本人志『遺書』『松本』(ともに朝日新聞出版)がミリオンセラーになる。「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理をつとめたのち、書籍編集部で部長をつとめ、2011年、朝日新聞社を退社。シニア雑誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長となる。17年に株式会社ハルメクを退社し、フリーランスで各種メディアに寄稿している。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)がある。

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