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『野武士のグルメ』を味わい尽くす

2014.03.21 公開 ポスト

大根仁×久住昌之対談
第2回 食への嗅覚はいかに身につくか?大根仁/久住昌之


そば屋なのに誰もそばを頼まない

久住 何を選ぶか、何をうまいと感じるかなんて、本当に人それぞれ。他の人はあまりピンとこない店なんだけど、俺にとってはコレがうまい、なんてことはいくらでもあるはずだから。

 よく行っていたお店が代替わりして、味が落ちたんじゃなくて、前よりもおいしくなった。だけど、自分からすると何か違うんだよなぁ……みたいな感性。僕が書きたいのはそんな矛盾とかなんですよね。
 結局、いろいろ失敗してナンボみたいなところはある。その時はイヤなんだけど、後で思い返して、誰かに話したりすると一緒に笑えるのは、たいていそういう話ですから。たとえば、うまいフグを食って、それを誰かに話しても「へぇ、いいなぁ。羨ましいなぁ」で終わりでしょ? 面白いのは食に関する失敗談なんですよ。

大根 食べ物に対する他人の評価なんてあまりアテにならないもの。それより、食べることに絡めた失敗エピソードのほうが共感しやすかったりしますよね。

久住 それから、B級グルメ、C級グルメっていうのを愛でているわけでもない。それって、もはやジャンルじゃないですか。B級って枠に入れて安心して食べるという。枠に収まらなくて、判断できずに困ってしまう……みたいなところに面白いドラマはある。僕にとってのA級が、アナタにとってはC級だったりする。そこのところの感覚が面白い。ジャンルに分けると鈍感になる。

大根 メニュー選びの失敗も面白いですが、その店の従業員とか料理人の人間性が見え隠れする瞬間とかも面白いですよね。「この店うまいんだけど、何か感じ悪いんだよなぁ。でも、自分にとってはそんなにイヤじゃないから、つい行ってしまう」みたいな。あと、俺がよく行くそば屋は、そばがメチャメチャまずいんだけど、それ以外の料理はメチャメチャうまい(苦笑)。たいていの客は居酒屋として使って、誰もそばを頼まないんです。で、店主が「いいかげんそばを頼んでくれよ。ウチはそば屋だぞ!」なんてブツブツ言ってる。

久住 そうそう、そういう店主の密かな葛藤とか!
 

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『野武士のグルメ』を味わい尽くす

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大根仁

1968年生まれ。ADとしてキャリアをスタートさせ、テレビ演出家・映像ディレクターとして、数々の傑作ドラマ、ミュージックビデオを演出。『劇団演技者。』『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』など深夜ドラマでその才能をいかんなく発揮し、話題作を連発。業界内外から高い評価を受ける。テレビドラマや舞台の演出を手掛ける傍ら、ラジオパーソナリティ、コラム執筆、イベント主催など幅広く活躍する先鋭的なクリエイター。脚本・演出を手掛けたドラマ『モテキ』(テレビ東京)が2010年7月より放送開始し大ブレイク。待望の映画監督デビューを映画『モテキ』(東宝)にて飾り、映画界に参戦する。

久住昌之

1958年東京都生まれ。マンガ家、ミュージシャン。1981年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」の『夜行』でマンガ家デビュー。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B.作の『中学生日記』で第45回文藝春秋漫画賞を受賞。谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』など、マンガ原作者として次々と話題作を発表する一方、エッセイストとしても活躍する。現在、幻冬舎plusにて『漫画版 野武士のグルメ 3rd season』(画:土山しげる)を大好評連載中。

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