いまどきのラーメン屋では自分を殺す
大根 主張とか個性が強すぎて辟易するんだけど、うまいからつい行ってしまう店とどう付き合っていけばいいのか、ホント困るんですよ。行きたくねぇなぁとか思いながら行ってしまう、あの感覚。ラーメン屋とかでありがちですよね。
俺、基本的に化学調味料が大好きなんで、いまどきのこだわりが強いようなラーメン屋とか、そんなに好きじゃない。それでも、たまに食いたくなるこだわり系ラーメン屋が何軒かあるんです。いわゆる、店員はみんな黒Tシャツでアタマにタオル巻いてる系のね(笑)。
久住 店の前で店主が腕組みした写真を飾っている、みたいな(笑)。店の前に己の威張ったような写真貼り出して、よく恥ずかしくないな!
大根 そういう店に行くときは、自分を殺して入るんです。ただひたすら、自分の目の前にあるラーメンだけに向き合って、他は一切視界に入れない勢いで。
久住 僕は、それだけで一本書けますね。
大根 その手の店で食べるときの緊張感ってすげぇあるじゃないですか。
久住 妙に声がデカかったりしてね。「っらっしゃい!!!!」みたいな。威嚇しているのか。
以前、とある横浜家系ラーメンの店に入ったとき、いろいろと好みが選べたんですよ。麺が堅めか柔らかめか、油は多めか少なめか、スープの味が濃いめか薄めか、とか。ただ、その店に入るのは初めてだったし、基準がわからなかったから、好みを聞いてくる女性の従業員に「えーと、全部普通でいいです」と言った。そしたら、彼女は厨房に向かって大声で「ラーメン一丁! お好みは、ないそうでーす!」なんて叫んだんです。いやいやいや、好みはあるよ!って(笑)
大根 失礼な店ですねぇ(笑)。
久住 その時は腹が立ったけど、あとになると、こうして笑ってもらえるんだ。
(構成:漆原直行 撮影:菊岡俊子)
(第3回に続く)