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『野武士のグルメ』を味わい尽くす

2014.03.26 公開 ポスト

大根仁×久住昌之対談
最終回 “野武士”とは自分だけの食を大事にする人大根仁/久住昌之

映像版「野武士のグルメ」はぜひ大根さんに

久住 そのためにも、失敗を恐れず、労を惜しまず歩き回る必要があるんです。でも、多くの方が結論にばかり注目するんですね。「どうしたら、作中に出てくるようなうまそうなモノに出会えるんですか?」「コツはなんですか?」みたいなことをよく聞かれます。おいしいものを描いているんじゃない、おいしそうな人を描いているんです。
 それゆえ、結論よりも過程。というか、過程しか考えていないかもしれない。「何がおいしいか」を知りたいなら、それこそガイド本やカタログでいいわけで。僕はマンガをつくっているわけだから、どうやってそれを食べたかだけが描きたいんです。面白くて、読んでいるうちにお腹がすくようなお話を考えているだけです。

大根 いや、実は俺も、まったく同じことを考えているので、びっくりしました。俺が監督する映像でも、作中でキッチリと結論を示したいみたいな欲はそんなになくて、そこに至るまでのどうでもいいシーンを撮りたい、みたいな気持ちが強いんです。
 たとえば『寅さん』シリーズなんて、最たるものですよ。物語の最後に、誰と誰がくっついたとか、別れたとか語られますけど、個人的にはわりとどうでもいい。それよりも、寅さんが“とらや”に帰ってきて、茶の間でくだらないやり取りをしているところが最高に面白い、とかね(笑)。『北の国から』も然り。メインキャラクターたちがその後、どうなっていったのかとかはあまり興味がなくて、それよりも富良野の町のグズグズした人間関係がたまらなく好きで、そこで繰り広げられるどうでもいいやり取りを、ずっと見ていたいほうでした。
 そういう感覚が、なかなか見る人に伝わらないのが難しいところでして。

久住 あぁ、そういう話を聞いてしまうと、ますます大根さんに『新さん』を撮ってもらいたくなるなぁ。

大根 ありがとうございます。ただ、いまは俺、映像版『野武士のグルメ』の監督をけっこう本気で狙ってますんで!

 

(構成:漆原直行 撮影:菊岡俊子)
 

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『野武士のグルメ』を味わい尽くす

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大根仁

1968年生まれ。ADとしてキャリアをスタートさせ、テレビ演出家・映像ディレクターとして、数々の傑作ドラマ、ミュージックビデオを演出。『劇団演技者。』『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』など深夜ドラマでその才能をいかんなく発揮し、話題作を連発。業界内外から高い評価を受ける。テレビドラマや舞台の演出を手掛ける傍ら、ラジオパーソナリティ、コラム執筆、イベント主催など幅広く活躍する先鋭的なクリエイター。脚本・演出を手掛けたドラマ『モテキ』(テレビ東京)が2010年7月より放送開始し大ブレイク。待望の映画監督デビューを映画『モテキ』(東宝)にて飾り、映画界に参戦する。

久住昌之

1958年東京都生まれ。マンガ家、ミュージシャン。1981年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」の『夜行』でマンガ家デビュー。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B.作の『中学生日記』で第45回文藝春秋漫画賞を受賞。谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』など、マンガ原作者として次々と話題作を発表する一方、エッセイストとしても活躍する。現在、幻冬舎plusにて『漫画版 野武士のグルメ 3rd season』(画:土山しげる)を大好評連載中。

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