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岸見一郎(哲学者)×原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)Skype対談

2014.04.04 公開 ポスト

特別企画<br />岸見一郎(哲学者)×原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)<br />Skype対談 第2回

ねじれた承認欲求が生み出す「嫌われたくなさ」

■狭すぎる世界での承認欲求

岸見 アドラー心理学は承認欲求を明確に否定しますが、原田さんの著書のなかには、承認欲求を求める若者が多く登場しますね。

原田 今の若者の承認欲求は大きく2種類あると思います。ひとつは高学歴の若者に多い、ソーシャルメディア上のもの。Facebookであれば、「僕、こんな活動してます!」とプチ自己PRを書き込んで、「いいね」を待つ。かなり意味の軽い承認だと思いますが。

岸見 よく話題にのぼる、典型的な承認欲求ですね。

原田 もうひとつが、マイルドヤンキーたちの、地元の友達や家族といった大切な人たちから日常のなかで得たいという承認欲求です。友達同士のドライブで運転手をやってくれてありがとう、といった健全なもの。

岸見 昔のヤンキーは承認欲求を満たすために非行に走ったと『ヤンキー経済』に書かれていましたね。今のマイルドヤンキーは、承認欲求のために非行に走ったりはしないんですか?

原田 少なくなってきています。マイルドヤンキーが求める承認は、地元友達から「高級ミニバンに乗っててすごいと思われる」程度で事足りるんです。悪ぶる子は減っていますよ。実に健全な承認欲求ではないでしょうか。

岸見 「健全な承認欲求」という言葉をお使いになりましたが、僕ははたしてそれが「健全」なのか、気になります。百歩譲って「健全」だとしても、地元というのは、あまりに狭すぎはしませんか? 彼らには、仲間内の相互承認以上のものを求める気持ちはないのでしょうか。たとえば、国際的な社会貢献とか。

原田 東京や大都市部にすら興味がない地方の若者たちが増えていますからね。遠い外国で戦争が起ころうが、あまり関係ないんですよ、彼らにとっては。仲間が集まる地元の居酒屋がすべて。地元で多くが完結しています。

岸見 政治についての関心はどうなんですか?

原田 これは若者全体に言えることですが、総じて政治意識は低いですね。「若者の政治離れ」なんて、かれこれ30年くらい言われていますけど、それがどんどん加速している感があります。僕がリーダーを務める若者研究所に所属する結構な高学歴の大学生たちですら、政治の選挙のニュースをちょっとだけ聞いて、「きのう総選挙だったんすか?」なんて聞いてくるんですからね。膝から崩れ落ちそうになりますよ。

岸見 アドラーなら、「共同体感覚がない」と言うでしょう。たしかに共同体の最小単位は「目の前にいるあなたと私」ですから、友達関係も一種の共同体と言えますが、彼らはそれを超えられない。超えたくないのでしょう。
 アドラーは「共同体」という言葉を非常に広い範囲で使っています。言ってみれば宇宙の果てまで。本の中では「無限」という言葉で説明しています。そしてアドラーは対人関係のゴールとして、その「無限の共同体感覚」を設定しているのですが、マイルドヤンキーには響かない概念なのかもしれません。

原田 ええ。マイルドヤンキーにとっては、「日本」や「世界」といった共同体なんて、あまり関係ないんだと思います。『ヤンキー経済』の実例で言うなら、5km四方、練馬区の石神井あたりまでが世界のほぼ全て。その外の世界は自分とあまり関係がない。

 

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