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岸見一郎(哲学者)×原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)Skype対談

2014.04.07 公開 ポスト

特別企画<br />岸見一郎(哲学者)×原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)<br />Skype対談 最終回

空気の読めない若者が時代の空気を変えていく

「縦社会」が崩壊するのは悪いことではない

原田 岸見先生は、ソーシャルメディアでも学生さんとつながっているんですか?

岸見 講義の後に、Facebookで友達申請してくださいと言うと、かなりの数の学生が申請してきます。社会人の娘にそういう話をすると、「そんなの絶対、ありえへん」と驚きますが。

原田 たしかに、一昔前に「大学の先生と友達」という発想はなかったですね。

岸見 友達になるということは、僕が学生たちの日常生活も知りうるということですが、それでもかまわないみたいです。場合によっては、「先生、家に遊びに行ってもいいですか」などと言われます。僕が若い頃は、先生の家を訪問することは一大事件だったんですけどね(笑)。とにかく、若い人が年齢差をものともせず、対人間としてぶつかってきているというのは、最近すごく感じるところです。

原田 かつての若者は縦の関係にとらわれていましたけど、そのお話を聞くと、そっちはあまり深刻ではなさそうですね。

岸見 彼らが社会の中核になり、会社内で役職に就いたとき、長らく続いてきた縦社会が崩れていく気がします。「上から押さえつけるような年長者はKY」が常識化すれば、今までとは違うかたち、違うあり方で上司と部下との関係が築けるのではないでしょうか。

原田 たしかに、彼らは縦にはとらわれていませんからね。

岸見 今の30代、40代くらいまでは、年長者からされてきたことをそのまま下の世代に行うことをしてきたわけですけど、若い人たちはそういったことをしないで、年長者と対等の関係を築こうとしているのでは。この点、展望は明るいと僕は見ています。

原田 となると、会社組織なんかはどうなっていくんでしょうね。

岸見 責任の所在を明確にした役職の違いと、意識としての対等は区別できるはずです。それで組織が混乱することはないと思います。

原田 そうなると今後はむしろ、若者以外の世代が変わらなきゃいけないのかもしれませんね。マイルドヤンキーが地元に残りたいと言っているのに目をつけて、「じゃあ地域貢献したがっている団塊世代とマイルドヤンキーがコラボして、地域活性化にとりくめばいい」と言っている人がいましたけど、僕はそう簡単な話ではないと思っています。

岸見 どうしてですか?

原田 団塊世代やそれに次ぐような年齢の皆さんは、長年ヒエラルキー社会に生きてきたので、すぐに「おい、若いの、それをやれ」といった上下関係を築こうとすると思うんです。だからうまくいかない。もちろん岸見先生はそんなことなくて、笑顔も素敵だし、お話ししていてすごくマイルドなご印象なので、学生さんもFacebookの友達申請をしやすいんだと思いますけど(笑)。

岸見 ありがとうございます(笑)。年長世代にもいろいろなタイプの人間がいるように、一口に若者といっても千差万別ですよね。原田さんは『ヤンキー経済』で、マイルドヤンキーというひとつの若者のタイプを分析されましたが、今後は別のタイプの若者研究も期待しています。

原田 そうですね。若者への興味は尽きないので、時代の変化をそのときどきの若者を通して分析していきたいと思っています。またぜひ先生ともご一緒させてください。

岸見 もちろん喜んで。原田さん、長い時間ありがとうございました。

原田 ええ、本当にありがとうございました。楽しかったです。

(おわり)

 

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