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青天の霹靂 情報

2014.04.25 公開 ポスト

劇団ひとりの「映画のつくり方」

第1回 劇団ひとり、物語を切り貼りする

「意味がわからない」と思われたくない

――編集段階では、撮影したシーンをかなりカットされたそうですね。苦心して撮ったものを削るのは辛くなかったですか。

ひとり いえ、ぜんぜん。小心者なので、お客さんに飽きられる方がずっと怖いんですよ。逆に、つまめるところを全部つまんでいったら、展開が早くなりすぎてなんの情緒もなくなっちゃいまして。あとで足した部分もあるくらいです。

――編集って単に尺を短くするだけじゃないですよね。物語展開のリズムなどは意識されましたか。

ひとり 当然、見ていて気持ちいいテンポを追求して編集するんですけど、結局、そのときの自分の体調とか、たぶん心拍数なんかにも左右されちゃうんですよ。さんざんいじっても、翌日に見直すと遅すぎると感じたり、別の日には早すぎると感じたり。何度も微調整しましたけど、すごく難しい作業でしたですね。お笑いで言うと、繰り返し稽古している気分に近いかな。何度もやるうちに、気持ちのいい間(ま)がわかってくる。正解が見えてくる。それを経てようやく、しっくりくる感覚が生まれてくるような。

――試写もかなり重ねて、編集に手を入れられたそうですが。

ひとり 2週間に1回ずつくらい試写が行なわれるんですけど、やるたびに偉い人がどんどん増えていくという恐ろしいシステムがありまして(笑)。その都度、容赦ないダメ出しを山ほど食らうんですよ。彼ら、平気で「こういうシーンが必要だ」とか言ってくるんです。そんなシーン撮ってないんだからどうしようもないのに。挙句の果てには、「画面に劇団ひとりが映ると冷める」とか言い出す始末(笑)。

――ひとりさんの映画なのに(笑)。それはともかく、編集するにあたって、いちばん大事にした基本方針ってなんですか。

ひとり 「意味がわからない」と思われないようにすることですかね。面白い、面白くないというのは、僕のセンスとお客さんとの相性の問題なので、どうしようもない。でも、あのシーンの意味がわからない、というのだけは避けたかった。そこは万全を期すために、どこかの大学生を試写に呼んでもらって、意味がわからなかったところはないかを、聞いたりしていました。

――その反応を受けて大幅に変えたシーンもありますか。

ひとり 最初のほうで、水浸しになった主人公・晴夫(大泉洋)の部屋が出てきますが、本当はもっとずっと長かったんですよ。カットしたシーンでは、水槽から出て部屋を逃げ回っている亀を晴夫が探していたんですけど、「何を探しているかわからない」っていう意見が結構あったので、編集でほぼ全部、ばっさり切りました。2日もかけてすごく丁寧に撮影したんですけどね。

――でも、長々と撮るよりは、完成版のようにコンパクトにして正解だったのでは。

ひとり いや、そんなことはありません! 今思えば、もっとうまく撮る方法があったはずです。絵コンテ上はちゃんと成立していたし、そのシーンの前に亀を登場させる前フリもあって、それも撮影していたんですけど、編集してみると、いまいち伝わらなかった。100人中100人に伝わらないというわけじゃないですけど、何人かが「わからない」と感じているなら、日本全国にすれば結構な大人数がわからないことになる。……って考えたらすごく不安になってきたので、切ったんです。(→第2回に続く)

 

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