人間の欲と深い業を描いた問題作——奇才・ジョージ秋山原作による『捨てがたき人々』(幻冬舎文庫)が、待望の映画化に!
監督は榊英雄、脚本はジョージ秋山の実子である秋山命が手掛け、原作のコアなエッセンスに独自のモチーフを加えて新しい映像ドラマへと再生させた。
主演は繊細な演技力と大人の色気を併せ持つ個性派俳優、大森南朋。金も仕事もなく、外見も内面も底辺を這う男「狸穴勇介」のむき出しの感情を体現。ヒロインは三輪ひとみ。過酷な運命に翻弄されながらも善良さを失うまいとする女「岡部京子」を体当たりで熱演。
衝撃の役どころ、新境地に挑戦している2人であるが、実際の現場はどうだったのだろうか。今作に込めた2人の熱い魂を感じてほしい。
——原作のマンガ、もしくは脚本を読んだ感想。それぞれの役を演じるにあたって。
大森南朋(以下:大森):正直、最初に原作を読んだときは、キツイなと思いましたね。かなり太ってますよね? 僕が演じるのか……と(笑)。
三輪ひとみ(以下:三輪):私はむしろ原作を読まないで現場に入ってくださいって言われて。読んでたら、かなりビビってたかもしれない(笑)。
大森:あれは誰もがビビってしまいますね(笑)。読みながら、僕が狸穴勇介を演じる以上に、京子を演じるほうがキツイだろうなと思ったので。僕自身は少し太ったり、髪型とかできるだけ近づけたつもりですけど、さすがに原作そのものの勇介まではなれなかった(笑)。まあ、でも、僕がやれることはやりました。
三輪:撮影は一言でいえば、とにかくハードでしたよね。
大森:肉体的なこともそうですし、撮影も長回しだったり。しかも、すごいネガティブな人の役でしたので、精神的にもかなり疲れましたね。
三輪:私も完全に疲れきってました。
大森:三輪さんもだいぶまいってるという噂を聞いていたので、大丈夫かな? って心配していました。
三輪:噂通りの状態でした(笑)。
大森:長崎県の五島列島での撮影で、約20日間監禁状態だったので、そのぶん、集中することはできたんですけど、終わってからちょっと(役柄を)引きずりましたね……なにしろ大変な役でしたので…… (笑)。
三輪:私も相当ひきずりました。映画が出来上がったって聞いても、しばらく観られなかったですから。最近になってやっと観られるようになったんですけど。
大森:ということは、2年かかったってことですよね?(編集部注:撮影は2年前)
三輪:そう、私には2年の月日が必要でした(笑)。
大森:結構引きずりましたね。
三輪:20日間の撮影を2年ズルズルと(笑)。
大森:それは相当でしたね。
三輪:あまりにもいろんなことが衝撃的すぎて。まあ、もともと自分を追い込むのは好きなのかもしれないけれど、それ以上に追い込まれた感がものすごくありましたね。とにかくケガの絶えない現場で。意外と裸になって抱き上げられると、それだけですごい痣ができるんですよ。しかも、嫌々と逃げるシーンが多いからいろんなところを擦ったりして、気づくと「なんでこんなところに痣が」って。あとで聞いたらあかね役の美保(純)さんもすごい痣だらけになったと。
大森:美保さんは僕を叩くところを本気でしたから、それで腕が痣だらけになってしまったみたいで。
三輪:もう、みんなあざだらけ(笑)。
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