
幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
三國清三『三流シェフ』

人の神様”に近づきたくて生やした口髭、
30歳での開業とバッシング、ミシュランとの
決裂―。時代の寵児と言われながら、が
むしゃらに突っ走ってきたぼくが、一大決心
をして「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店する理
由と、ぼくが戦ってきた人生のすべて。
一方こちらは天才シェフのノンフィクション。フレンチのカリスマ・三國清三の自伝である。
北海道の漁村・増毛に生まれ、中学校卒業を機に単身札幌に出て、昼間は住み込みで働きながら、夜間の調理専修学校に通った。ある日、住み込み先でハンバーグが出てくる。少年は見たこともなかった。初めて食べて思わず声を漏らす。「旨め、旨め」。市内の高級ホテル「札幌グランドホテル」ではさらに本格的なハンバーグを出すと知ると、わずかな糸を手繰り寄せるようにして、なんとか厨房で働き始める。
そこから料理人の道を歩む。休まなかった。寝なかった。仕事以外のことは何も考えなかった。当時を三國は振り返る。「必死だったのは、なにもできないし、なにも知らなかったからでもある」と。
やがて東京・帝国ホテルに職を得て、その後スイスの日本大使専属の料理人に転身する。すべてはまったく順調ではなかった。行く先々でトラブルに遭い、絶望もした。だが、そんなとき、冬の荒れた海で船を漕ぐ三國少年に父が呟いた言葉を思い出す。「大波が来たら逃げるな。船の真正面からぶつかってけ」。逃げて船腹に大波を受ければ沈没するように、どんな困難にも舳先をまっすぐに向けて立ち向かうしかないのだ。
15歳で親元を離れた三國は、いま68歳になった。世界中のシェフが憧れる存在になり、東京・四谷のグランメゾンに加え、全国に店舗をもつ成功者だ。それでも自分を「三流」と称し、すべてをリセットし、新たな道を歩もうと決めた。小手先の努力では何も得られない。
読者は三國の人生を追体験しながら、前を向く力を得られる。こんな熱い本を年末年始に読めるのは幸せだ!
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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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