いっそのこと宇宙人が攻めてきてくれたらいいのに
香山 小さなところをうまく調整して対立を解決したら、その果てには何かがありそうなんですか。私は調整というか、うまくバランスを取るみたいなことに、もう辟易していて。
湯浅 そうなんだ。
香山 実は、私の中に変に全体主義的なところがないわけでもないんです。いっそのこと誰か怖い人が、「このままでは恐ろしいことが起こる」と脅かしてくれれば、みんないっぺんに考え方を変えるのに、と思ったりする。前に「九条の会」で「江原啓之さんに“憲法を変えたら日本の守護霊が怒って大変なことが起きます”と言ってもらえないかな」と言ってバカにされました(笑)。
湯浅 丹波哲郎さんのほうがよかったんじゃない?(笑)
香山 そうかも(笑)。
別に人間を信頼してないわけじゃないけど、「調整して」とか、「うまく説得して」とか、「メタな視点を持って」といったことに、もうあまり可能性を感じられない。だからすべての多様性を認めるんじゃなくて、逆にいったん多様性をチャラにするしかないんじゃないかと思ってしまうんです。
昔、大槻ケンヂが、「そういうときは宇宙人が攻めてくればいいんですよ」って言ってて、それもそうだなと妙に納得しちゃった(笑)。
湯浅 宇宙人に襲撃されたら、まとまるよね、人類として(笑)。それこそ聖書の黙示録の千年王国からマルクス主義の恐慌待望論まで、人類がずっと昔から思ってることですから。心情的にはよくわかります。
それでも若い人たちの中には、まだ一部ではあるけれど、調整のためにエネルギーを割くのを厭わないというか、そういうことに馴染んでいる人が増えているように思います。
今の若い人たちって、小さいころから人間関係の機微を敏感に感じ取りながら生きているでしょ? 微妙な人間関係のバランスをとりながら生きることで、したたかなコミュニケーション能力を身につけてきてるんですよね。
たとえばまちづくりで、地方の村で何か新しいことをしようとすると、いろいろなしがらみがあって、おそろしく面倒くさいじゃないですか。これが企業であれば、ある一定レベルに達していない人間は採らないこともできるし、本当にどうしようもなければリストラもして、同質性が高い集団を維持することができる。でも、地域は気に入らない人間を採らないこともできなければ、リストラもできない。そういうところでまちづくりを進めて各方面の合意を取り付けるには、よっぽどしたたかな能力が要求される。
いまの若い人たちが、そのような多様性をまとめる力を潜在的に持っていることに、私は希望を感じているんですけどね。
(構成 長山清子)
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