一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
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元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第37回 鯨井あめ『白紙を歩く』
皆さん、こんにちは。時には博士と歩きたいアルパカ内田です。
行き先のわからない不安、ぼんやりとした希望。誰もが悩み、苦しみ、闘い続けていた日々の記憶を完全凝縮した、新たな青春のバイブルが登場。読めば誰もが「あの頃」の自分と再会できることだろう。
物語は二人の女子高生を軸に進んでいく。才能あふれる陸上部員は走る意味を小説に求め、読書一筋の帰宅部員は創作に情熱を傾ける。どんなに走れども不安にかられ、高い壁にぶつかってしまう厳しい現実。そして小説の力を信じ、物語ることによって心を奮い立たせる理想の世界。アンバランスな虚と実、激しく明滅する光と闇……まったく違った二つの個性のむき出しの交錯に心を奪われる。
太宰治『走れメロス』を読み解くシーンに注目だ。感想文は書かされても小説の読み方は教科書に載っていない。誰もが知る名作であっても、感じ方は千差万別で答えは一つではないのだ。読者それぞれのアプローチで「読む自由」を体感できれば、小説はもっと無限の可能性を世に知らしめることができるだろう。
物語は万能なのか? 生きるとは何か? この作品には確かな哲学がある。深く考えるほど人は大きく成長でき、本を読むほど生き方のバリエーションが増えるのだ。何かに打ち込む楽しみ、本を読む喜び、思考することの大切さ。たくさんの「学び」が伝わってくるこの物語は、明日への生きる糧にもなる。若い世代の魂に響くだけではない、真っ白なキャンバスを自分色に染めるヒントをくれる、価値ある一冊である。
アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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