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アルパカ通信 幻冬舎部

2024.10.26 公開 ポスト

鯨井あめ『白紙を歩く』/岩井圭也『夜更けより静かな場所』-読書の面白さを再確認できる小説2作!アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
岩井圭也『夜更けより静かな場所

大学生の吉乃はある日、伯父が営む古書店
を訪れ、薦められるままに長編小説を購入
する。スマホも寝食も忘れ小説に没頭した
吉乃は読了後、誰かにこの本について語りた
い、と古書店で開かれた読書会に参加するが
……。6篇の連作短編集。

なんと、こちらも「本」を題材にとった物語。就活を始めたばかりの女子大生・吉乃は、ある日、伯父の茂が経営する古書店「深海」を訪れる。そこで薦められたのはそれまでまったく無縁だったロシア文学の『真昼の子』という大長編。気は乗らなかったがせっかく買ったのだからと読み始めると、意に反してその面白さにドはまり。時間が経つのも、スマホを見るのも忘れて夢中になった。それは吉乃には初めての体験で、以来「深海」に通うように。

やがて茂から『真昼の子』を課題図書にした読書会に誘われる。吉乃と茂以外の参加者は、店のバイトや、常連客、そして、吉乃に好意を持つ元高校球児など6人。閉店後の深夜0時、読書会が始まる。解釈の仕方や、伝え方の優劣などに関係なく、単純に物語を自分はどう読んで、どう感じたのかを語るうちに、参加者の内面に変化が生じていくのだった。

読書会は課題図書を変えながら回数を重ねるのだが、その過程で参加者たちの人生が明らかになっていき……。

本を読むという行為の奥深さや、一冊の本で人生が変わることがあると改めて教えてくれる作品。本に関わる仕事をしていることに責任と喜びも感じられた。ちなみに作中作として登場する小説はすべて著者のオリジナル。抄録だけでもあまりに面白いので、全編を読んでみたいと思ったのは私だけではないだろう。先般直木賞候補にもなったブレイク中の著者が読書の秋に贈る、最高のプレゼントだ。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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