いちばん下に女性を置くことで男たちがまとまる?
湯山 テレキャノにおいて、男の集団や競争がエンターテインメントのためのドラマツルギーだとわかっていても、まあ、私は女なので、笑いものにされ、下に置かれて蔑視される女たちに関しては、非常にカンに障ったのは事実です。
女性は男性から欲求されて当たり前の存在で、自分からセックスだけの関係を求めていく女は浅ましいという考え方は根強い。肉食女子なんて言葉ができましたけど、綺麗な子が肉食ならまだしも、デブで中年でブスな女が肉食だとすると、男からも、そしてここが重要なんですが女からも蔑まれてしまう。『テレキャノ』には下位にそういう女が存在することで、「こんな女とヤレたオマエは男として凄い」と、男たちがまとまるという構図がありますよね。
松尾 そうかなあ……(苦笑)。
湯山 かつては、職場で女はいくら有能で、頑張っても、男性と同等の地位や報酬は得られず、お茶くみという制服を着ている女の下支えのおかげで会社で働く男性達たちは安定していた。こんなバカな俺でも、女よりはすごい。俺が養わないと女は食っていけない。その構図により男のプライドが保たれていた。今は、すでにそういう時代ではなくなっていますが、下支えとしての女は醜くて、ご褒美はいい女、というテレキャノのモードは、「やっぱオレたち、そういう社会の方が好きなんだよねえ」などという、ホンネが聞こえてきそうですよ。
松尾 意図的じゃないんですよ。スピードを競った結果、ああなっちゃっただけで。もちろん僕らも可愛い子を見つけたかったけれど、顔がわからないテレクラで相手を探すから、実際に会う女性は社会的にはあまりメインの街道を歩いている人ではない可能性が高くなりますよね。まあ、それを見て笑っちゃってるわけですから、ひどいことこの上ないんですけど。
湯山 ひどいですよ。「40代はマイナス1点」に、客席で隣の若い女が大笑いしたのに、怒髪天を突きまして(笑)、腕を組んで憮然としていたら、その怒りオーラが伝わったのか、その隣の女性を含めて、周囲からだんだん笑いが消えていったという。まあ、こういう「みんないっしょ」に水を差す行為も、映画館で映画を観る楽しみの一つですからさ。
松尾 年齢での加点や減点はひどいですよね。言い訳しません。
湯山 顔出しすると加点でしたけど、どうやって口説くんですか?
松尾 顔出しは無条件で3万円プラスなんです。顔出しは本人にとってリスクが高いので、「顔をだすと3万円上乗せしますけど、どうしますか?」と女性に任せました。2009年の前回大会では同じ交渉をしても顔出しする人は少なかったのに、今回はガラッと変わった。みなさん、目の前の3万円が重要なんです
湯山 ああ、それはおもしろい。格差貧困の時代を象徴してますね。
松尾 まさにそうです。
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