◆単行本第1巻のカバーは「キモオタデブ」のアップ
――今、連載が始まって何年ぐらいですか。
関根 始まって、ちょうど2年がたとうとしているところです。単行本としては先日第7巻が出たばかりです。
――鈴木さんのルポを原案にして、漫画を肥谷圭介さんにお願いしたのは、どのような経緯だったんですか。
関根 ちょうど『モーニング』では、新人作家さんをガンガン登用しようというムーブメントのときだったんです。肥谷さんは当時の新人さんのなかでも圧倒的にすばらしい才能を持っていた。それで「これをやりませんか」と持ちかけて現在に至ります。
――よく「原作○○ 画○○」という漫画はあるけれど、『ギャングース』は表記のしかたが違いますよね。鈴木さんは「原作」ではなく、「ストーリー共同制作」になっている。
関根 そうです。実は編集長から、本に書かれた実話をそのまま漫画にするのではなく、マンガとしても強いキャラクターを立ててほしいというリクエストがあったんです。ルポの登場人物がそのまま肥谷さんのマンガのおもしろいキャラクターになるわけでは必ずしも、ない。不良経験のない肥谷さんでも生き生きと熱量をこめて描けるキャラクターを立てよう、ということになったんです。一方で、もちろん原案のリアリティや情報量は絶対に捨ててはいけない。そういうなかでベストな座組みを模索したところ、鈴木さんにも一緒にストーリー作りに参加していただくことになりました。また「ストーリー共同制作」というクレジットは、ちょうどモーニングで浦沢直樹先生、長崎尚志先生が連載されている『BILLY BAT』のクレジットが最もふさわしい言葉だと思えてきてしまい、そのまま真似してしまいました(笑)。
――『ギャングース』に出てくるキャラクターはみんなとても魅力的ですよね。やってることは褒められたことではないけれど、どんどん応援したくなってくる。
関根 ありがとうございます。女性の意見をぜひお聞きしたいんですよ。今、漫画の売上をスタートダッシュさせてくれる層は20代から40代ぐらいの女性で、主人公の男性がカッコいいかどうかは大事な要素です。
でも『ギャングース』の主人公の3人は、サイケという子こそイケメンという設定ですが、カズキはキモオタデブでしょう(笑)。単行本の第1巻のカバーはカズキがアップで鼻水をたらしてるイラストですから、書店に行くと女性の書店員さんから、「何でこんな表紙にしたんだ」とか、「何でこんなキャラを出すんだ」みたいなことを言われたりしたんですよ。
――私はあまり漫画を読まないこともあって、『ギャングース』を最初に読んだときは、線の量が多いというか、密度が濃いというか、あまりにも絵に迫力があって圧倒されました。
関根 女性は白っぽい画面のほうが好きですよね。
――迫力があるので圧倒されたし、最初すぐには感情移入ができなかった。それが読んでいって登場人物が把握できると、主人公たちがどんどん愛おしくなってくる。漫画の力ってすごいなと思いました。
関根 ありがとうございます。
――鈴木さんの原作をそのまま漫画にした場合は、この主人公たちの存在や、キャラクターとしての膨らみは出てこなかったんでしょうね。
関根 おっしゃるとおりです。肥谷さんは、迫力だけで押すのでなく、怖さのなかに、かわいさだったり、ユーモアだったりを表現する方なので、それがとても大事だったんじゃないかと。