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「ズタボロ」対談

2015.05.03 公開 ポスト

後編

必死に生きる人を瑞々しく描く、「ズタボロ」という映画【後編】ゲッツ板谷(作家)/清水富美加(女優)

『ズタボロ』 5月9日 全国ロードショー (C)2015 東映ビデオ

今年5月9日、映画「ズタボロ」が公開されます。それを記念して、原作『メタボロ』『ズタボロ』(幻冬舎)を執筆されたゲッツ板谷さんと、ヒロインの清美役を演じ当サイトでも連載「たぎりおにぎり」をもつ清水富美加さんの対談をおこないました。笑い溢れるお二人の対談、全2回に分けてお届けします。(文、写真:伊東朋夏)


ぶん殴って生まれる、家族の絆

-本作も、「板谷家の親子の絆」が描かれていますが、清水さんとご両親はどんな感じですか?

清水 お母さんは「女友達」感がすごく強いので、「親」と言われて先に浮かぶのはお父さん。コーイチのお母さんほど口うるさくないけど、すごく厳しくて!だけど、本当に大変なときは守ってくれるのは一緒ですね。私、高校3年間ずっと反抗期だったんですけどね。

ゲッツ え、高校のときずっと?

清水 高校のときは怒られすぎて、一回叩かれたことがあったんです。「なんで叩くの」って言ったら「言っても聞かないやつは犬と同じだ!」って(笑) 昭和のオヤジなんですよ。でも、本当に自分が困ったときは誰よりも守ってくれる。高校を卒業したとき「いっぱい喧嘩もしたけど、お父さんが一番私を守ってくれたよ」って言ったんです。
いまは、ふたりでドライブして奥多摩の温泉とかに行きますし。めっちゃ仲いいんですよ。

ゲッツ うちも中2の男がいるんですけど、いま超反抗期で、3学期は半分しか学校行かなかったですね。「塾は行けよ」って言ってたんですけど、この前「お前塾どうしたんだよ」って聞いたら「行ってない」と。ずーっと2か月くらい、怒らずに我慢してたんですよ。だけどそこで頭きて、ぶん殴っちゃって。

清水 髪をつかんで、ヒザ蹴り?(笑)

ゲッツ そこまでじゃない(笑)まあうちのガキが中学の間は、ずっと闘いが続くかなって。
でも親だったら自分の子供がどうなったって守っていかなくちゃいけないじゃないですか。ときには悪者になるかもしれないけど、その後清水さんのとこみたいに「あのときはありがとね」という気持ちになってくれたらそれはそれでいいよね。
何もやらないのは一番悪い。わかっててめんどくさいから触れないっていう人もいるけど、でもオレはやっぱり自分のガキが悪いことやったら怒んないといけないと思ってる。

お袋は散々グレてるときに全然逃げなかったから。俺、小児喘息だったんですよ。なのに吸引機使わなくて。それで苦しくなるんだけど、夜の11時から朝6時まで、ずーっと背中をさすってくれて。そのときは別に当たり前だって思ってたけど、いま冷静に考えてみたら誰でも自分の子の背中を7時間さすれるわけじゃないですよね。

清水 泣ける…。

ゲッツ 俺がグレたときは、たまり場の周りを自転車でぐるぐる回ったり。他のやつは自転車に乗ってるのが俺の母親って知らないから、「また変なヤツが来た」って囃し立てて、俺も知らん振りをして一緒に言っちゃって。自分の母親のことをそう言うことほど悲しいことはなかったですね。

清水 でも、そんな状況で言い出せないですよね。これが実話っていうのがすごいです。

ゲッツ 神社でお祭りがあって、夏にグレてる連中が集まるんですよ。そこで先輩に「板谷、あそこにいるツッパリを倒して来い」って言われて。隣の中学の強いヤツだったんですよ。それで、喧嘩になったらうちのお袋がたまたま親戚と一緒にお祭りに来ていて、「コーイチ、やめろおおおお」って止めに来て。パッてみたらお袋が、浴衣がはだけてブラジャー1枚の姿で相手を箒でぶっ叩いてたんですよ(笑)そのとき先輩に「お前は喧嘩のとき、家族を借り出すのか」って嫌味言われちゃいましたね。

 

脳出血を乗り越えて

―『ズタボロ』映画化については?

ゲッツ 1作目「ワルボロ」はいい映画だと思ってたんですが、あまり興行成績がよくなかったんです。正直、これで終わりかなって思っていました。そしたらプロデューサーが、映画が終わってすぐ「続編やるんで早く続きを書いてくださいよ」って。
でもその後、脳出血で1年くらいで書く予定だった続編に、4年半かかってしまったんです。その間、そのプロデューサーが毎月俺の家に来るんですよ、なぜか。ラーメン食べに行ったり、バスケしたりとか。とにかくお互い映画の話はしない。俺も4年半あいたから、もう続編は無理だと思ってたし。
それが結局、2冊書き上がったときに「映画を作りましょう」と言われました。「たぶんダメだろう」からの映画化だったんで、『ズタボロ』がすごく可愛いし、そのプロデューサーにも感謝しています。

-清水さん、映画のなかでお気に入りのキャラはいますか?

清水 キャームが可愛らしくて!実際のキャーム役の子も役作りのために、電車に乗っているときにずっと前の人を睨んでたらしいんですよ。で、「お前何やってんだよ」って言われて「役作りだよ」って(笑)

ゲッツ ははははは(笑)キャーム本人はうちの中学では一番モテてたんですよ。人気の子15人くらいに告白されたのに、本人はかっこつけて全然相手にしない。今聞いたら結構ドキドキしてたらしいんですけど。でもそのツケでまだ独身なんですよね。

清水 チャンスは、来たときつかまないといけないんですね。

ゲッツ キャームは作戦を立てることが多かったですね。ヤッコっていう中心のやつがいて、ヤッコがいるから俺たちも一緒に突っ張れたっていう。こっちが状況的にやべーなーってときでも、ヤッコがいればなんとかなるって思ってた。

清水 ゲッツさんが体験した喧嘩のなかで、一番痛かったのっていつですか?

ゲッツ シリーズ1作目にも書いたんですけど、中2まで超真面目だったんですが、あることがきっかけで授業中にヤッコと喧嘩になったんですよ。そしたらヤッコとチョーパン(頭突き)合戦になって。隣の席に、オレがずーっと好きだった子がいたんで引くに引けなくて。ヤッコを病院送りにした後、鏡を見たら鼻が90度曲がってたんですよ。でも「こんな鼻で行ったら好きな子に嫌われる」って、自分でぐいって戻したんです。そしたら頭のてっぺんから「バキーンッ」てものすごい痛みがきて「うああああ」って叫んでましたね。

 

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「ズタボロ」対談

今年5月9日、映画「ズタボロ」が公開されます。それを記念して、原作『メタボロ』『ズタボロ』(幻冬舎)を執筆されたゲッツ板谷さんと、ヒロインの清美役を演じ当サイトでも連載「たぎりにぎり」をもつ清水富美加さんの対談をおこないました。笑い溢れるお二人の対談、全2回に分けてお届けします。(文、写真:伊東朋夏)

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ゲッツ板谷 作家

1964年東京都立川生まれ。作家。十代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙しの日々を送る。著書は『ワルボロ』『メタボロ』『ズタボロ』(幻冬舎)など多数。本シリーズの第二作『メタボロ』を執筆中に脳出血で倒れ、二か月間生死の境を彷徨う。その後、長いリハビリ貴下を経て、奇跡の復活を遂げる。

清水富美加 女優

女優 1994 年生まれ。2015年には、NHK連続テレビ小説「まれ」に、ヒロインの同級生・蔵本一子役として出演。2017年公開の話題の映画 『暗黒女子』主演、『東京喰種』ヒロインで出演。

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