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『啼かない鳥は空に溺れる』刊行記念対談  母と娘の確執、母に入ってほしくない聖域「恋愛」

2015.08.04 公開 ポスト

【前編】 母と娘、両方の視点から描く
「確執」について鈴木涼美/唯川恵(作家)

●母親も十分傷ついている

鈴木 千遥はお母さんから言われたひどいことに呪縛されているじゃないですか。私も「この人、私のことがすごく憎いんだな」と母に対して思った出来事が人生で3回くらい、ピンポイントであります。最初は幼稚園のとき。友達のお母さんからお菓子をもらったのにもじもじして「ありがとう」と言えなくて、お母さんから「ありがとうって言いなさい」と言われれば言われるほど言えなくて。あとから「あなたは私の子どもじゃないと思うわ!」と言われたことをすごく覚えてる。

唯川 お母さんが怒った気持ちはよくわかる。たぶん、ふだんは「ありがとう」と言えていたのに、お母さんが一番言ってほしいときに限って、意地を張って言わなかったんじゃない?

鈴木 そうかもしれない。

唯川 そこから母と娘の戦いが始まっていたんだろうな。

鈴木 私も、母に対してけっこうひどいことを言った記憶があります。他の人に「母親はとてもじゃないけど友達になれないタイプ」と、母に聞こえるように言ったりして。

唯川 十分傷ついてると思う。

鈴木 最近は、「結婚しないと人生孤独よ」とか、いわゆる世間一般の良き母みたいな人が言いそうなことを言うようになったんです。昔は「結婚のために男に媚を売らなくて済むように専門性を持ちなさい」とか言う人だったのに。大人って勝手だなって。

唯川 母親も変わっていくんだと思う。結婚して子どもを産んだら、人生に多少の違いはあっても、母親になったという部分では同じだから、母親が一番身近な先輩になる。それはある意味、娘が母を認めたことになると思うのね。

鈴木 でもお母さんは、私が選ぶ男のことも、ことごとく気に入らないんですよ。


【後編】恋愛における「母親のような無償の愛情」について は、8/7(金)に公開いたします。

 

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『啼かない鳥は空に溺れる』刊行記念対談  母と娘の確執、母に入ってほしくない聖域「恋愛」

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鈴木涼美

1983年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒。東京大学大学院修士課程修了。小説『ギフテッド』が第167回芥川賞候補、『グレイスレス』が第168回芥川賞候補。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『愛と子宮に花束を 夜のオネエサンの母娘論』『おじさんメモリアル』『ニッポンのおじさん』『往復書簡 限界から始まる』(共著)『娼婦の本棚』『8cmヒールのニュースショー』『「AV女優」の社会学 増補新版』『浮き身』などがある。

唯川恵 作家

1955年金沢市生まれ。2002年『肩ごしの恋人』で第126回直木賞受賞。08年『愛に似たもの』で第21回柴田錬三郎賞受賞。『燃えつきるまで』『雨心中』『テティスの逆襲』『霧町ロマンティカ』『手のひらの砂漠』『逢魔』など著書多数。

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