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2013.11.04 公開 ポスト

特集 生き方3.0 國分功一郎×麻木久仁子スペシャル対談

「政治色がない」運動なんて運動じゃない(1/4)麻木久仁子/國分功一郎

住民運動は「プロ市民」がやること?

麻木 私にはマスコミの人たちが実際どういう気持ちだったかはわからないけど、特定の政治的主張に偏っていなかった、つまり、あまり党派性が見えなかったということもあるんじゃない?

國分 ああ、それはあるでしょうね。

麻木 だってジャーナリストとしては、あまりにも党派性がむき出しになってると身構えるでしょう。

國分 麻木さんにも、住民運動や市民運動って、特定の政党がやってるとか、「プロ市民」(「市民」を名乗ってあちこちの運動に顔を出す運動家を揶揄[やゆ]する隠語)がやることだ、というようなイメージがありました?

麻木 まあ日本では、政治に関わること自体がうっとうしいことだって思われてるじゃない? 右とか左とかいう以前に、政治に関心を持って政治的な発言をする、行動をするってこと自体が、そもそもウザいと思われかねない社会だから。

 最近も、「プロ市民」であれ何であれ、政治に関心を持つ人たちに対する表面的な批判がある。「ヘサヨ」とか、「ネトウヨ」みたいなレッテル貼りは、非常によくないと思う。

 ただ、そういう人と実際に会うと、妙に目がキラキラしてて、確かにうっとうしいなと思うことはあるけど(笑)。

 だけど、たまたまその人がウザいっていうことと、「政治に興味を持つやつはウザい」ということはやっぱり違う。そこをはっきりさせないと、短絡的に「政治的主張はウザい」「政治はウザい」となっちゃう。

 それに、労働運動をはじめ反原発や反差別、貧困者救済など、さまざまな運動を長年コツコツと、世間が注目しないときでも続けてきた人たちを、軽視したり揶揄したりするのは、まったく違うと思う。その積み重ねがなかったら、今はもっとひどいことになっていたかもしれないんだから。

 さっき私は「党派性が見えなかったんじゃない?」と言ったけど、「党派性がない」とは言ってない。だって、政治って党派抜きにはあり得ないから。政治に関われば、何かの主張を掲げれば、既成の共産党とか、社民党とか、自民党とかの紐が付いていなくても、必ず党派性を帯びる。だから本当は、「党派性がないのがよかった」という言い方は、ちょっと気をつけないといけないのかもしれない。

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麻木久仁子

1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退後、芸能活動を開始。司会者、女優、エッセイスト、コメンテーターなど幅広く活躍。無類の読書好きで、TBSラジオ『麻木久仁子の週刊「ほんなび」』のパーソナリティを務めるほか、人気書評サイトHONZのレビュアーでもある。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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