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生き方3.0

2013.12.05 公開 ポスト

特集 生き方3.0 國分功一郎×麻木久仁子スペシャル対談

「御用学者」「御用国民」になってはいけない(4/4)麻木久仁子/國分功一郎

国家ちゃんと国民ちゃんがおててつないで……

麻木 市民の側で権力を警戒する感覚が失われていることとコインの裏表で、国会議員の側でも、自分が権力側だっていう自覚が失われているような気がする。例えばちょっと批判されただけですぐに名誉棄損で訴えたり、「私だって一国民、一庶民なのに」とか言う国会議員がいるじゃない? 議員バッジを付けるということは、まさに権力・統治機構の側に身を置くことなんだっていう自覚がない。あるいは、自覚がないフリをして、それで国民に通用すると踏んでるわけよ。

 この間、ある政治家が「国家と国民は敵対しているとみんな思ってるでしょ。それは違うんですよ。国家と国民とは手を携えていくものなんだ。だから憲法に国民の義務を書いてもいいんです」って発言してた。いまやそんな論法がまかりとおっちゃうの。

 だから私、「国家ちゃんと国民ちゃんのゆるキャラが仲良く手をつないで坂道をスキップして、『さあ、憲法を改正しよう! 国家と国民が仲良く手をとろう』っていうコマーシャルがいまに出るんじゃない」って言ってるんだけど、本当にそうなるよ。

國分 しかも、たぶん、それのどこがおかしいのか、みんな答えられない。

麻木 国家は私たちを守ってくれる存在ではあるけど、そうじゃなくなる可能性だってあるのにね。その政治家は、「国家と国民が対立していたなんていうのは、絶対王制時代の話」「古い概念なんだ」って言うの。でも統治機構を形成しているのが、王様であろうが、民主主義の選挙で選ばれた国会議員であろうが、官僚だろうが、そもそも統治機構って、力で国民を縛る性格を持っているものでしょ。国家のように大きい船を統治するためには、何らかのかたちで強制とか暴力装置が必要になるのは当然。

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麻木久仁子

1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退後、芸能活動を開始。司会者、女優、エッセイスト、コメンテーターなど幅広く活躍。無類の読書好きで、TBSラジオ『麻木久仁子の週刊「ほんなび」』のパーソナリティを務めるほか、人気書評サイトHONZのレビュアーでもある。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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