どうしたら暴走する行政を制御できるのか?
麻木 この本にも、いまの民主主義では法律を執行する行政が実質的な権力を持つようになる、だから立法権を握ってるだけじゃダメなんですよって書いてあるでしょ。
國分 そう、立法では行政を制御できない。
麻木 だから、私、みんなこの本のここ読めよと思ったの(笑)。ここだよ! これこれ! って。
國分 「統治は単なるルールの適用にとどまらない。どんなルールを定めても、実際の統治はそこから離れていく可能性をもっている」(138ページ)というところですね。「主権による立法によって、統治を完全に制御することなど不可能」だ、と(これは政治哲学者の大竹弘二さんの論文に大いに啓発されて書いたところです)。
日本は民主主義で国民主権と言われているけれど、それは法律によって行政を制御する仕組みであることが前提になっている。でも実際には立法だけで完全に制御するのは不可能です。様々な民主的手続きによって、つねに行政を制御しよう、法の運用過程に関わろうと試み続けるのが、たぶん民主主義なんですよ。
麻木 いい言葉。額に入れて拝みたいぐらい(笑)。
國分 ありがとうございます(笑)。行政はつねに暴走する危険をはらんでいる。民衆はそれを民主的な手続きをもって監視し続け、おかしくなったら引き戻さなくちゃいけない。統治と民衆の間には、そういう緊張関係があることを忘れてはいけない。
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