続いて第3章「本を読む」からの抜粋です。
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私は自分自身を教養人だと思ったことは、一度もありません(実態はむしろ野蛮人に近いと思っています)。ですが、私にいくばくか教養のようなものがあるとすれば、それを培ってくれたのは、「本・人・旅」の三つです。私はこれまでの人生で、「本・人・旅」から多くのことを学んできました。あえて割合を示せば、本から五〇%、人から二五%、そして旅から二五%ぐらいを学んできたといったところでしょうか。
さまざまな本を読み、さまざまな人に出会い、さまざまな場所を旅すると、世界にはこれほど素晴らしいところがあり、こんなにも素晴らしい人がいるのかと、その広さと豊かさをあらためて実感します。同時に、自分の小ささや幼さがよく分かります。「本・人・旅」は、常に私に身の丈を思い知らせ、謙虚であらねばと思わせてくれます。「本・人・旅」は私の人生の道標なのです。
とはいえ、私はこの三つから、必ずしも何かを「学ぼう」としているわけではありません。私を動かしているのは、何よりもまず「面白い」という感覚です。「好きこそものの上手なれ」と言うではありませんか。本を読むのは面白いから読む、人に会うのは面白いから会う、旅をするのは面白いから旅に出る。万事がその調子で、私の価値観では常に「面白いかどうか」が一番上にあるのです。
社会人になってからは、仕事が忙しいので本を読む時間が激減しました。そこで、「寝る前に一時間だけ本を読む」というルールをつくりました。これは、いまでも続いています。
移動時間も利用しています。いまでも通勤の地下鉄や飛行機のなかでは、寝ている時間以外は本を読んでいます。
日本生命時代は三十歳で上京してから連続十三年間、MOF担(モフタン)といって対金融行政の仕事をしていました。仕事柄いろいろなつき合いが必要で、毎晩のようにお酒を飲んで、帰宅は午前二時や三時が日常茶飯事。それでも「寝る前に一時間だけ本を読む」というルールを決めていましたので、いくら酔っていても、家に帰ってから必ず一時間は本を読むようにしていました。主として三十代から四十代前半のころのことです。
その代わり、ゴルフはやりませんでした。平日のお酒に加えて土日のゴルフもおつき合いしていたら、本を読む時間がまったくなくなってしまいます。「ゴルフはできません」と言い続け、週末には読書の時間を確保していました。本とゴルフを比較して、ゴルフを捨てたのです。もう一つ、テレビを見ることも捨てました。
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次ページでは第3章と第4章の目次をご紹介します。
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