「第4次産業革命」という言葉を聞いたことがありますか?
「えっ、まだ、IT革命の最中じゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、今起きている変化は、「革命」の名に値する、それとは一線を画する新しい変化です。
そして、第4次産業革命で最大の激震に見舞われるのは製造業だと言われています。それはなぜなのでしょうか?
News Picks編集長・佐々木紀彦さんも「AI入門の決定版だ」とお薦めの『シンギュラリティ・ビジネス――AI時代に勝ち残る企業と人の条件』著者の齋藤和紀さんが、解説します。
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「第4次産業革命」が始まっていたのを知っていますか?
2016年の半ばあたりから「第4次産業革命」という言葉がよく聞かれるようになりました。この言葉の始まりは、ドイツが2013年4月に提唱した「インダストリー4.0」というプロジェクトでした。工場の情報をデジタル化し、AIやITの活用によって産業そのものをネットワーク化しようという試みです。これを過去の産業革命に匹敵する大変革ととらえて、「第4次産業革命」と呼んだのです。
第1次産業革命は、18世紀末の英国で起こりました。蒸気機関や自動織機などの発明によって産業全体が飛躍的に効率化したのです。19世紀後半から20世紀初頭にかけて起きた第2次産業革命の中心地は、米国でした。化学、電気、石油、鉄鋼などの分野でイノベーションが進み、消費財の大量生産が可能になったのがこの時期です。このふたつの産業革命は一連のものと見なすこともできます。それを「第2次産業革命」と位置づけ、はるか昔に起きた「農業革命」を第一次産業革命とする見方もあります。
それに続く第3次産業革命は、ほんの30年ほど前に「情報」の分野で起きました。コンピュータやインターネットを中心とする「IT革命」がそれです。まだその革命の真っ最中だと感じている人も多いでしょう。しかし、いまAIやナノテクノロジーなどを中心に起きている変化は、IT革命とは一線を画する新しい動きです。
重要なのは、次の革命やバージョンアップの起こる時期が人類史を通じてどんどん早まっていることです。狩猟採集社会の始まりを旧石器時代とするなら、それは200万年ほど続きました。それに取って代わった農耕社会が18世紀の産業革命によって工業化社会に転じるまでは、およそ1万年。2ケタ早まっています。
そこから情報革命までは数百年ですから、ここでもやはり2ケタ早まりました。まさにエクスポネンシャルなペースで進化してきましたから、IT革命から間もないこのタイミングで第4次産業革命が起きるのは、決して驚くべきことではありません。
おそらく第5次産業革命はそれから数年後、第6次産業革命はその数カ月後、それ以降は数週間、数日、数時間……という間隔で革命的な変化が訪れます。テクノロジー進化の加速度が「無限大」に近づくとは、そういうことなのです。
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シンギュラリティ・ビジネス
2020年代、AIは人間の知性を超え、2045年には、科学技術の進化の速度が無限大になる「シンギュラリティ」が到来する。そのとき、何が起きるのか? ビジネスのありかた、私たちの働き方はどう変わるのか?