■死んだ画家の新しい絵も、ビートルズの新曲も
淳 でも、どっちかを選べるということですよね。さっき齋藤さんが言ったように、競走馬の生き方も選べるし、牧場に行ってのんびりする生き方も選べるし。
篠田 うーん。どうなんでしょう……。
淳 あなたはどちらですか?
篠田 あはははは。
齋藤 正規雇用に関して言えば、アメリカではフリーランス的な働き方が増えています。経済の世界でシェアリング・エコノミーという流れがありますが、その究極の形は、人間の才能も、あちこちでシェアして使ってもらうということじゃないか。だから皆さん、いろいろなことをやって、社会のために貢献できるようになると思うんですよね。
淳 なるほどね。シリコンバレーに行って、俺が一番驚愕したのは、みんながタクシーの運転手さんをやり合っているということ。どこかに行きたい人を、時間がある人が、「俺そこの距離だったら運んであげられるよ」って言って運んであげる。
篠田 ふーん、すごい。今は朝10時に会社に行って5時か6時に退社して、というルーティーンを当たり前に思っているけど、これからはそういうことにとらわれず、皆さんが自由に自分の時間や能力を使えるようになるってことですね。
齋藤 そうです。
淳 みんながタクシーの運転手さんをやれるっていうのも技術革新だけど、タクシーの運転手さんそのものを、AIがやり始める可能性だってあるわけですよね。
齋藤 はい、自動運転車が。
篠田 だとすると、芸術の世界は進化しますかね? 人間がこれまで働いていた時間に、絵を描いたり、書道をしたりするようになって……。
淳 みんなが芸術に時間を割くことができるようになる?
篠田 はい。ほかにも音楽とか。
淳 それは伸びそうじゃないですか?
齋藤 伸びると思いますね。今、日本のコンビニに行くと、納豆味の焼きそばとか日本酒味のチョコレートとか売っていて、驚きますよね。それって、ある種の感性の爆発だと思うんです。テクノロジーの進化の揺り戻しというか、それとバランスをとるようなかたちで、芸術を楽しむムーブメントは起きてくるんじゃないのかなあ。
篠田 AIが絵を描くとか、音楽をつくるとか、書を書くとか、そっちの方はどうなんですか? 人間とはやっぱり違うんでしょうか?
齋藤 AIも教えればできちゃうと思います。
淳 有名な画家のタッチを全部データにしてAIに入れるという話は知ってます。その画家が死んでも、そのタッチはデータで残ってるから。
篠田 わーっ、そっかー。
淳 死んだはずの画家のオリジナルの新しい絵を、AIが描いているってありましたよね。
齋藤 ビートルズの曲をつくっているAIもありますよ。
淳 えーっ!
齋藤 聞くとやはりビートルズに聞こえる……。
淳 ジョンが好きなコード進行とか、ポールが言いそうな歌詞とかを、データで全部入れるってことですね。
齋藤 そうですね。
淳 すげー。
篠田 芸術の世界もどうなるか分かんないですね。
淳 ですね。
淳 さあ、ここでお時間となりました。齋藤さん、技術がどんどん爆発して、僕たちの頭じゃ理解できなくなったときに、また解説をよろしくお願いします。
齋藤 こちらこそよろしくお願いします!
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