「どうぶつーズの漫画」が、12月22日公開分で、ついに連載100回を迎えます。
長く連載をしていただいているきくちゆうきさんですが、実は、幻冬舎plusの執筆陣のなかでもいちばん素顔が知られていない、謎の作者です。
連載100回を記念して、ついにその素顔が明らかになります!
(構成・長山清子 写真・菊岡俊子)
人間はどうせ死んじゃうんだから
―ーきくちさんは、そもそも、どうしてイラストレーターになったんですか?
きくち 人間はどうせ死んじゃうから。生きてるあいだはやりたいことをやろうと思ったからですね。
ぼくは今、31歳ですけど、絵を描くのは小さいころから好きだったんです。高校に入っても絵を描く仕事がしたくて、卒業して大学とかには行かずに、絵を描きながらいろんなアルバイトをしてました。
そのころはmixiに自分の描いた絵を上げてたんです。そうしたら、イベントに誘われて出るようになって、知り合いも増えて……。
――その頃はどんな絵を描いていたんですか?
きくち カエルが流行っていたので、カエルだけたくさん描いたり、1枚の紙に同じキャラクターを描ける描いたり。でも「すごいね」とは言ってもらえるんですが、それで終わっちゃう。それで、これは違うなと感じて、今のようなキャラクターものにシフトしていきました。
――ずっとアルバイトしながら?
きくち はい。7年ぐらいアルバイトをしてたんですが、25歳のときに印刷会社に就職してサラリーマンをやりました。一応デザイン部門でイラストを描いてて、仕事がないときは他部署を手伝ったり。でも「やっぱ違うな」と思って、3年働いて辞めました。
――サラリーマンをやっていれば、そこそこ安定した生活をしながら、絵も描けましたよね?
きくち そうですね、安定はしてましたが、仮に定年までここに勤めるとしたら、あと30年以上はいなきゃいけないんだよなーと思ったら、きっつー(笑)。それからすぐに上司に言って、辞めました。
――迷いはなかったんですか?
きくち なかったです。自分がやりたいことをやるんじゃなかったら、ほかにどんな仕事をしても同じだと思ったし。
――そうなんですね。きくちさんって、「ガッツ」や「情熱」に突き動かされて……というふうに見えないので、ちょっと意外(笑)
会社での仕事は、イラストレーターとしてのスキルになったんですか?
きくち スキル……。印刷用のデータの作り方とか、入稿の仕方はそのときに覚えました。あと、辞める前に、会社でペット用品をつくる事業が始まって、そのコンセプトづくり、デザイン、商品製作から出荷まで、全部自分たちでやったんですよ。その仕事をしたことで、商品をつくって、プロモーションして、売るまでの流れがわかりました。
だから、フリーになってからは、イラストを描くだけじゃなくって、Tシャツ、ステッカーとか缶バッジとか、自分のイラストの入ったグッズをつくって、イベントで販売していました。
――辞めてすぐ食べていけた?
きくち そうですね……ちょうどLINEスタンプが始まったときで、スタンプの売り上げがけっこう入ってきたんです。イベントでの感触もよかったです。
――じゃあ、すぐイラストの仕事だけで、生活が成り立ったんですね。
きくち はい。会社を辞めてからもう5年ぐらい、ほかの仕事はしてません。
――駆け出しのイラストレーターさんって、雑誌の編集部に売り込みしたりすると思うんですが、きくちさんは、グッズとかLINEスタンプとか、最初から自前で描いてつくって売っていくスタイルだった。
きくち はい。グッズは会社にいたときからつくっていて、ヴィレッジヴァンガードに置いてもらったりしていました。
――それは自分で売り込みをして?
きくち いえ、今まで営業を一回もしたことがないんです。イベントに出ていたら、ヴィレッジヴァンガードの人が見て「お店に置きませんか」と言ってくれて。営業はちゃんとやったほうがいいなとは思うんですが、これまでずっとこんな感じできちゃいました。
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