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美智子さまという奇跡

2019.12.17 公開 ポスト

雅子さまに託す私たちの思い

どうぞ雅子さまにとっての「生きやすい」皇室を【2019年Yahoo!ニュースで人気1位(再掲)】斎藤環(精神科医)/矢部万紀子(コラムニスト)

被災地訪問、子育て……雅子さまにとっての「実存」

矢部 先生が2011年4月1日に書かれた「雅子妃への、きわめて控えめな提言」という「WEBRONZA」の文章も引用させていただきました。宮中祭祀や公式行事への出席のような「本当に意味があるかどうかわからない仕事」とは全く違う仕事だと、被災地訪問を勧めていらっしゃった。21世紀の今もなお象徴的存在にだけ可能な行為がある、その行為が雅子妃に「なにがしかの“実存の支え”と“回復の糸口”をもたらすのではないか」という表現にとても感動しました。

斎藤 あの時の私は震災後の軽躁状態で、普段は依頼された原稿しか書かないのですが、自発的に書かせてもらいました。自分が自分である、存在する意味がある。それを感じられる、ほぼ唯一のチャンスだと思い、この発生直後のタイミングで書かねばと。

矢部 先生の文章がアップされた5日後、皇太子と雅子さまが調布の避難所を訪問されたのですよね。

斎藤 あれには私も驚きました。

矢部 その後、東北にも行かれて、避難した人たちと接した雅子さまが涙を流す様子も報道されて、「実存」を感じていらっしゃるに違いないと思いました。ところが雅子さまバッシングの中でも最大級の「愛子さま山中湖校外学習へのお付き添い」が起きるのが、この年の9月なんです。

斎藤 2泊3日の校外学習の全行程に付き添われたのでしたね。

矢部 せっかく被災地に行かれて、いい方向に動き出したかと思ったのに、また世間の憤りを招いてしまう。愛子さまの不登校という出来事があり、雅子さまは子育てにのめり込んだと言われています。

斎藤 不登校には、雅子妃バッシングの影響がかなりあるわけです。お母さんが世間から責められているというのは子どもだってわかります。学校という公共空間に行ったら、どんな目で見られるか、子ども心に予測したりするわけです。

矢部 雅子さまも愛子さまもお気の毒ですが、理解が世間に広がりませんでした。文藝春秋の座談会で、先生が皇太子さまを擁護していたのも印象的でした。参内が少ないと批判されていましたが、心の病を得た人の家族としての振る舞いとしては、とても正しいと。

斎藤 病の妻と両親、どちらにもいい顔をしていては、妻の信頼は得られません。全力でお守りすると言った以上、極端に言えば時には両親も敵にするような行動は必然かなと思いました。

矢部 ですが、天皇家の孫が学校に行けないのは「躾」の問題ではと見る人も多くいて。

矢部万紀子『美智子さまという奇跡』

1959(昭和34)年、初の民間出身皇太子妃となった美智子さま。 その美しさと聡明さで空前のミッチーブームが起き、 皇后即位後も、戦跡や被災地を幾度となく訪れ、ますます国民の敬愛を集められます。 美智子さまは、まさに戦後の皇室を救った“奇跡”でした。 ですが、奇跡は、たびたび起こることがないから、奇跡と言われます。 今私たちの目に映るのは、雅子さまの心の病や眞子さまの結婚問題等、 次の世代の方々が、世間にありふれた悩みを抱えている姿です。 美智子さまの退位と共に、皇室が「特別な存在」 「すばらしい家族」である時代も終わるのでしょうか? 皇室報道に長く携わった著者が「奇跡の軌跡」をたどる、等身大の皇室論です。

 

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美智子さまという奇跡

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斎藤環 精神科医

1961年、岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、精神分析、精神療法。「ひきこもり」ならびに、フィンランド発祥のケアの手法・思想である「オープン・ダイアローグ」の啓蒙活動に精力的に取り組む。漫画・映画などのサブカルチャー愛好家としても知られる。主な著書に『戦闘美少女の精神分析』『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』(以上、ちくま文庫)、『アーティストは境界線上で踊る』(みすず書房)、『「社会的うつ病」の治し方』(新潮選書)、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川文庫)、『承認をめぐる病』(日本評論社)、『人間にとって健康とは何か』(PHP新書)、『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)などがある。

矢部万紀子 コラムニスト

1961年三重県生まれ。コラムニスト。83年朝日新聞社に入社し、記者に。宇都宮支局、学芸部を経て、「アエラ」、経済部、「週刊朝日」に所属。94年、95年、「週刊朝日」で担当したコラムをまとめた松本人志『遺書』『松本』(ともに朝日新聞出版)がミリオンセラーになる。「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理をつとめたのち、書籍編集部で部長をつとめ、2011年、朝日新聞社を退社。シニア雑誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長となる。17年に株式会社ハルメクを退社し、フリーランスで各種メディアに寄稿している。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)がある。

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