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美智子さまという奇跡

2019.12.17 公開 ポスト

雅子さまに託す私たちの思い

どうぞ雅子さまにとっての「生きやすい」皇室を【2019年Yahoo!ニュースで人気1位(再掲)】斎藤環(精神科医)/矢部万紀子(コラムニスト)

「食うために働いた世代」との間の埋まらない溝

斎藤 座談会でもあらわになっていましたが、どうも僕らより10歳以上年上の方には皇室のいろいろなことが「わがまま」に映り、容認できないんですよね。

矢部 終戦前に生まれた世代は、特にそうですね。

斎藤 食うために働いた世代ですから。

矢部 雅子さまに皇室が合わせる「雅子さま制」にするのか、と。

斎藤 いやいや、病気ですから。そこを理解すれば、「雅子さま制」などという発想にはならないと思うんです。批判する人は、何のためにするのでしょう。批判したら回復が遅れるのは当然で、そこが私には理解できない。

矢部 ビシッとしてほしいんだと思います。

斎藤 天皇の孫なのだから、学校など行かせず、一流の教師を呼んでご進講してもらえばいいと思うんですよね。遊ぶ場所は別に確保して。天皇家ですら学校という空間から逃れられないのかと思うと、忸怩(じくじ)たるものがあります。

矢部 美智子さまが子育てでも公務でも、何でもできてしまったから、上の世代の人たちはそれと比較して苛立つのだと思います。美智子さまバッシングも平成になってありましたが、広がらなかった。

斎藤 確かに比較対象としては、分が悪いですね。両陛下とも疎開体験があることを、この本を読んで知りました。

矢部 陛下は奥日光、美智子さまは軽井沢で終戦を迎えています。

斎藤 戦争を知らない世代には生存の危機はリアルでない。だから実存がなければ生きられない。その点、疎開体験とは生存の危機ですから、経験することで覚悟が、という表現はなんですが。

矢部 雅子さまに足りないと言われる(笑)。

斎藤(笑) 覚悟が違ってくると思うんです。戦時体験というのは人格レベルにすごく影響して、強くもなるし、もろくもなるのですが、両陛下の場合は強さに作用したということかもしれませんね。平和の希求にも影響を与えているでしょうし。天皇家ですから、「戦争責任」という言葉と無縁ではいられず、その責任感もあったでしょう。

*   *   * 

*続きは後編[令和の天皇皇后両陛下には「皇室の当事者研究」をお願いしたい]でお読みいただけます。

矢部万紀子『美智子さまという奇跡』

1959(昭和34)年、初の民間出身皇太子妃となった美智子さま。 その美しさと聡明さで空前のミッチーブームが起き、 皇后即位後も、戦跡や被災地を幾度となく訪れ、ますます国民の敬愛を集められます。 美智子さまは、まさに戦後の皇室を救った“奇跡”でした。 ですが、奇跡は、たびたび起こることがないから、奇跡と言われます。 今私たちの目に映るのは、雅子さまの心の病や眞子さまの結婚問題等、 次の世代の方々が、世間にありふれた悩みを抱えている姿です。 美智子さまの退位と共に、皇室が「特別な存在」 「すばらしい家族」である時代も終わるのでしょうか? 皇室報道に長く携わった著者が「奇跡の軌跡」をたどる、等身大の皇室論です。

 

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美智子さまという奇跡

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斎藤環 精神科医

1961年、岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、精神分析、精神療法。「ひきこもり」ならびに、フィンランド発祥のケアの手法・思想である「オープン・ダイアローグ」の啓蒙活動に精力的に取り組む。漫画・映画などのサブカルチャー愛好家としても知られる。主な著書に『戦闘美少女の精神分析』『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』(以上、ちくま文庫)、『アーティストは境界線上で踊る』(みすず書房)、『「社会的うつ病」の治し方』(新潮選書)、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川文庫)、『承認をめぐる病』(日本評論社)、『人間にとって健康とは何か』(PHP新書)、『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)などがある。

矢部万紀子 コラムニスト

1961年三重県生まれ。コラムニスト。83年朝日新聞社に入社し、記者に。宇都宮支局、学芸部を経て、「アエラ」、経済部、「週刊朝日」に所属。94年、95年、「週刊朝日」で担当したコラムをまとめた松本人志『遺書』『松本』(ともに朝日新聞出版)がミリオンセラーになる。「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理をつとめたのち、書籍編集部で部長をつとめ、2011年、朝日新聞社を退社。シニア雑誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長となる。17年に株式会社ハルメクを退社し、フリーランスで各種メディアに寄稿している。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)がある。

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