◆政治運動に「過激さ」は必要なのか?
上野 占拠しちゃうっていう手は?(会場、笑)。
國分 うーん(笑)。今占拠してもまだ早すぎるかもしれない。いざ「もう切るぞ!」となったときはそれもありかもしれませんが。
上野 寒いしね。冬は風邪ひくからやめとこう(会場、笑)。
國分 やっぱり上野さんの世代だと、そういうちょっと過激なほうがいいんだ! みたいな感じはあるんですか(会場、笑)。
上野 やっぱり不服従っていうのは行為で表さなきゃダメだというところはありますね。
國分 僕のやり方は、ちょっと生ぬるいですかね? どうですか、正直なところ(会場、笑)。
上野 どうなんでしょう。団塊世代はジュニアをこういう順法精神を持つように育てたのでしょうか。でも、行政や企業のほうがコンプライアンス(注:法律遵守)を持ってないでしょう? コンプライアンスがない人に対して、市民がコンプライアンスで対抗しても、勝ち目ありませんわね。
國分 勝ち目がないかどうかはわかりませんが、すごく大変なことは事実です。それに、何か過激なことをすると、人心が離れていってしまうという感覚が、僕のなかに強くあるんですよ。
上野 人心が離れてしまうのは困ったものですね。だけど過激イコール暴力的、じゃないですよ。「誰が」「どんなやり方で」するかによりますよね。女子どもが前面に出て体張って反対すれば、その人たちに対する共感が来ますから、それだけの力はあります。山口県の祝島だって、原発建設反対運動を主としてやっているのはおばちゃんたちで、「男は当てにならんばい」とおっしゃっておられますです(笑)。
國分 小平市でも、運動の中心はお子さんがいる40代の女性の方々でした。あとはご老人。僕がたぶんいちばん下だったのかな。学生はあんまり入ってこなかったんですよね。
上野 どうしてです?
國分 それはずっと謎でした。今は学生が熱心に手伝ってくれるようになりましたけど。以前、雑木林にいた女子大生たちに僕が署名をもらいに行ったら逃げられちゃったりして(笑)。
上野 それは相当あやしかったからでは(笑)。
國分 やっぱりそうですか(笑)。
上野さんはどうご覧になっているかわかりませんが、今の学生って、とても一生懸命いろんなことをやります。社会をよくしたいという志も高い。だけど自分から入っていくのがすごく苦手なんですよ。「引っ込み思案」と言うのか、その点がちょっと心配。うまく導くと熱心にやってくれるんだけど、なかなか自分からは入り込めない。
上野 最初のきっかけは大事です。ちょっと肩を押したら悪の道に入ってしまう人もいるし、ヘイトスピーチのほうに行ってしまう人たちもいる。どこに転がるかわからない。そこはちゃんと道筋をつくって、「こっちにおいで。こっちの水は甘いよ」と言ってあげないといけない。政治参加は、やってみれば楽しいことですもん。
國分 そうなんですよ。そのことを僕も大事にしています。
上野 社会正義っていう理由ももちろんあるけれど、やっぱりやると楽しいってことが一番。これを味わっていただくことが大事ですよ。私はウィメンズアクションネットワークっていうNPOをやっておりますが、楽しいです。これは宣伝です(笑)。