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上野千鶴子×國分功一郎対談「上野先生、民主主義はお好きですか?」

2014.02.05 公開 ポスト

第3回

「民主主義イコール多数決」ではない上野千鶴子/國分功一郎

◆政治運動に「過激さ」は必要なのか?

上野 占拠しちゃうっていう手は?(会場、笑)。

國分 うーん(笑)。今占拠してもまだ早すぎるかもしれない。いざ「もう切るぞ!」となったときはそれもありかもしれませんが。

上野 寒いしね。冬は風邪ひくからやめとこう(会場、笑)。

國分 やっぱり上野さんの世代だと、そういうちょっと過激なほうがいいんだ! みたいな感じはあるんですか(会場、笑)。

上野 やっぱり不服従っていうのは行為で表さなきゃダメだというところはありますね。

國分 僕のやり方は、ちょっと生ぬるいですかね? どうですか、正直なところ(会場、笑)。

上野 どうなんでしょう。団塊世代はジュニアをこういう順法精神を持つように育てたのでしょうか。でも、行政や企業のほうがコンプライアンス(注:法律遵守)を持ってないでしょう? コンプライアンスがない人に対して、市民がコンプライアンスで対抗しても、勝ち目ありませんわね。

國分 勝ち目がないかどうかはわかりませんが、すごく大変なことは事実です。それに、何か過激なことをすると、人心が離れていってしまうという感覚が、僕のなかに強くあるんですよ。

上野 人心が離れてしまうのは困ったものですね。だけど過激イコール暴力的、じゃないですよ。「誰が」「どんなやり方で」するかによりますよね。女子どもが前面に出て体張って反対すれば、その人たちに対する共感が来ますから、それだけの力はあります。山口県の祝島だって、原発建設反対運動を主としてやっているのはおばちゃんたちで、「男は当てにならんばい」とおっしゃっておられますです(笑)。

國分 小平市でも、運動の中心はお子さんがいる40代の女性の方々でした。あとはご老人。僕がたぶんいちばん下だったのかな。学生はあんまり入ってこなかったんですよね。

上野 どうしてです?

國分 それはずっと謎でした。今は学生が熱心に手伝ってくれるようになりましたけど。以前、雑木林にいた女子大生たちに僕が署名をもらいに行ったら逃げられちゃったりして(笑)。

上野 それは相当あやしかったからでは(笑)。

國分 やっぱりそうですか(笑)。

 上野さんはどうご覧になっているかわかりませんが、今の学生って、とても一生懸命いろんなことをやります。社会をよくしたいという志も高い。だけど自分から入っていくのがすごく苦手なんですよ。「引っ込み思案」と言うのか、その点がちょっと心配。うまく導くと熱心にやってくれるんだけど、なかなか自分からは入り込めない。

上野 最初のきっかけは大事です。ちょっと肩を押したら悪の道に入ってしまう人もいるし、ヘイトスピーチのほうに行ってしまう人たちもいる。どこに転がるかわからない。そこはちゃんと道筋をつくって、「こっちにおいで。こっちの水は甘いよ」と言ってあげないといけない。政治参加は、やってみれば楽しいことですもん。

國分 そうなんですよ。そのことを僕も大事にしています。

上野 社会正義っていう理由ももちろんあるけれど、やっぱりやると楽しいってことが一番。これを味わっていただくことが大事ですよ。私はウィメンズアクションネットワークっていうNPOをやっておりますが、楽しいです。これは宣伝です(笑)。

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上野千鶴子

社会学者・立命館大学特別招聘教授・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。『上野千鶴子が文学を社会学する』、『差異の政治学』、『おひとりさまの老後』、『女ぎらい』、『不惑のフェミニズム』、『ケアの社会学』、『女たちのサバイバル作戦』、『上野千鶴子の選憲論』、『発情装置 新版』、『上野千鶴子のサバイバル語録』など著書多数。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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