
認知症の母、犯罪者の父
ーーところで今作は、医療サスペンスに加え、家族ドラマという柱もありますね。史郎は女手一つで育てられ、今も母親と二人で住んでいるんだけど、母親は認知症を患っていて史郎に辛い言葉を投げかける。一方、父親は、どうしようもないクズで、犯罪者。この家族が小説を通じてどうそれぞれの折り合いをつけていくのかというところも読みどころです。デビュー作から一貫して、天才の苦悩、加害者と被害者など重いテーマを扱っていますが、これは意識してのことですか?
岩井 まずお母さんが認知症っていうのは実は初めから決めていて。これは本作執筆のきっかけにもなったNHKの番組で認知症の受刑者が出てきたのがあって、これは絶対に書こうと。
それで、これまで書いてきたものもこれから書こうとしているものも、印象としては重いものが多いと思うんですが、実は自分では重いものを求めているわけではなくて。根源的に書きたいものが、人間と人間の関係、人間の関係性を書きたい。
それは友情、親子、いろいろな関係性がある中で、物語の中の関係性にはしたくない、関係性のための物語を書きたいんですね。先にストーリーがあって、だからこういうキャラクターが必要だと、そういう書き方もあると思うんですけど、私の場合、先に描きたい関係性が合って、そこから物語を構築していく。
その時に、やっぱりその関係性っていうのは切実であってほしいし、生半可であってはならないかなと。それはたとえば今作であれば、母親と息子、犯罪者の父親と息子で、さらにネタバレになるので言えませんが、ラストでさらに切実な関係性が加わって。
――小説のラストですね。衝撃でした。ラスト、その人とその人はこういう関係性になるっていうのは決めているんですか?
岩井 ある程度は決めていますね。ただ、書いているうちにお互いの主張が出てくるので、若干の方向修正はもちろんあります。
――なるほど。ところで、影響を受けた作家さんは?
岩井 沢木耕太郎さんですね。『凍』『無名』など人間を描くという点で非常に感銘を受けました。それと、大学のときは伊坂幸太郎さん。本屋に行って、片っ端から読んで。『重力ピエロ』など影響を受けました。中高はそんなに読んでいなかったかな(笑)
――ありがとうございます。では最後に、今後の予定が決まっていれば教えて下さい。
岩井 「小説すばる」で連載している「生者のポエトリー」は4月売り5月号に第5話がでます。それとまだ言えないのですが、文芸誌で毎月連載が1本、単行本で長編が1本、これらはいずれ発表できると思います。Twitterなどで告知するのでよろしくお願いします。
(岩井さんTwitterはこちら → https://twitter.com/keiya_iwai)
――続々ですね。楽しみにしています!
プリズン・ドクター

注目の新鋭が描く、手に汗握る医療ミステリ!
奨学金免除の為しぶしぶ刑務所の医者になった是 永史郎 。患者にナメられ助手に怒られ、 憂鬱な日々を送る。そんなある日の夜、自殺を予告した受刑者が変死した。胸を搔きむしった痕、覚せい剤の使用歴。これは自殺か、 病死か?「朝までに死因を特定せよ!」所長命令を受け、史郎は美人研究員・有島に検査 を依頼するが――。