このファッションで損してるなって思うのは
「ギャップを演出してる」って言われること
石黒 学校もそういうファッションで行ってるんだよね。他の学生からどんな感じの言われ方するのかな?
大石 私は自分が人にどう見られるかとかあんまり気にしないので、言われ方とか自覚はないんですけど。例えば駒場キャンパスは銀杏並木がはじっこからずらーっとまっすぐ並んでるんですけど、そのはじっこにいても、反対側から分かる、って言われたことがあります。ゴスロリの子とかはいるんですけど、私みたいなカラフルでファンシーな感じはいないですね。目立つとは言われますね。
石黒 そういうファッションの東大生として、得してるなとか損してるなと思うことは?
大石 得してるっていうのは、やっぱり覚えてもらえること。人に覚えていただけるのはすごく嬉しいですね。あのときのあの子か、みたいに。よくあったのが、私が知らないのに一方的に知られてる、ということ。友達の彼氏の友達が知ってるとか、なんかそういうことがあって。それで悪いことはないので。どうせなら声かけてよ、仲良くなりたいよとは思うんですけど。
損してるなと思うのは、ギャップを演出してると思われること。なんか「とんがりたいんでしょ」って思われたりすると損してるな、と思う。学校の友達じゃ別に東大生ってことは普通なので言われないんですけど、外の人から「東大生なのにこんな自分、ていうのを演出してるんでしょ」とか言われる。結果としてそうなってるんでしょうけど、狙ってやってるわけではない。好きなことをできる範囲で最大限にやりたいだけなんですけど、「東大生なのにこうやってる自分っていうのを見せたいからやってるんでしょ」って思われるのは損かなって。まっすぐに見てもらえないのが何度かありましたね。もともとどう思われたいっていうのはないので「悔しい」とか「残念」とかは思わないけど、なんかこう「疲れるなあ」っていう感じがします。
石黒 ギャップというか、実際に会ってしゃべったらちゃんとしてるって言われることない?
大石 よく言われます。ネットとかで顔出ししてるので顔だけ知られてるってことがあって、初めて会ったときに「見かけよりフワフワしてないんだね」とか「意外とハキハキしてるね」とか言われることは、ほぼ全員ですね。そのギャップに関しては、なんとも思わないというか、楽しいギャップだからいいと思うんですけど。
本を出すのは東大受験以上に大変でした
石黒 まだ23歳で無限の可能性があると思うんだけど、これからどんなことをやっていきたい?
大石 大きい目標としてはイラストと文章の執筆活動を続けていきたいっていうのはあるんです。ただ厳しい世界っていうのは感じているので、自分が本当に卒業してからそういう生活をできるかということを試すために、今年1年は仕事関係の執筆活動を続けつつ、絶対修士論文を書いてやる、って思ってます。
石黒 東大入試のときのがんばりをもう一回やるってことかな。
大石 私にとっては東大受験っていうのは1冊の本になるくらい大きなことだったんですけど、本を出すっていうのは東大受験以上に大変でしたね。全部大変でした。だから私よかったと思って。東大受験以上のことをやらないと先には進めない、夢は叶わないって思っていたので、そういう体験させていただけて、一歩また壁を破れたかなと思っているんです。だから、今年はもっと本も出したいし、イラストと文章の仕事ももっと増やして次に繋げたいし、一方で修士論文というのもものすごく厳しい世界なのでそれも絶対やり遂げたい。もう1年ないので、4月からはかなり飛ばさないと卒業できないし。それをやりながら、仕事も今以上にやりたいので、両方をやりきったら、この厳しい世界でなんとかやっていけるって、自分を試す。それが今の大きな目標なんです。
60年代生まれかと思うほどのガッツ、そして素直さ。
石黒謙吾より
ランちゃんと初めて会ったのは、2013年1月、荻窪のブックカフェギャラリー「6次元」を訪ねたとき。その場で紹介され、まだ執筆活動を始めたばかりで『spoon.』に掲載された記事を見せてもらいました。チャート分析を用いて90年代女子をタイプ別考察したもの。その記事は、僕の分類王としての本『図解でユカイ』を参考にしたのだとも。ぱっと見て、これは面白い感性持ってるなとピピっと来て「本、いけそうですよ。何かやりましょうよ」と、すぐにプロデュースがスタート。
小説を書きたいという希望は持っていたけど、幻冬舎・菊地さんからの提案もあり、絵も描けるし最初はコミックエッセイからがいいのではとなった。プロット→ネーム→ラフ→ペン入れと、構想からちょうど1年かかって本になりましたが、この間、常に感じていたのは、彼女の持つ、90年じゃなく60年代生まれかと思うほどのガッツ。プラス素直さ。そして、ディレクションに対する吸収力の良さが光った。
先走り前のめり生き急ぎで失敗も多いけど、それがあるから面白い。彼女がいつも自分に対して唱えてる、園子温監督の最新作「地獄でなぜ悪い」の決め台詞、「全力歯ぎしりレッツゴー!」……まんまです……。
ちなみに僕個人として縁の不思議さを感じていることが。最初に会ったとき、仕事の話しをして別れ際。「蘭って本名だよね? オレ、いま「全キャン連」(全国キャンディーズ連盟)の代表やっていて、筋金入りのラン派なんだ」と言うと、「うちの父も、キャンディーズ解散の後楽園球場にいたらしいですよ」と! なんと、共に「全キャン連」の、あちら九州支部、僕は北陸支部の一員として、1978年4月、歴史的なあの時間を共有していたとは……。年も僕と同じでした。なんという奇遇。
おそらく、お父様がその思いも込めたであろう名前、蘭。その名のように、大きく咲いていくと思います。
石黒謙吾(いしぐろ・けんご)
著述家・編集者
■映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』、分類王”としての『図解でユカイ』、『2択思考』『7つの動詞で自分を動かす』『ダジャレヌーヴォー』『ナベツネだもの』『ベルギービール大全』など幅広いジャンルで著書多数。近著『あいつの気持ちがわかるまで』
■プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『飛行機の乗り方』(パラダイス山元)など200冊。
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