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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)

2022.05.06 公開 ポスト

『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』刊行記念対談

マジで不幸を呼ぶ岡本さん。加藤千恵さんとの念願のオンライン短歌対談で、一度も自分の顔が映らないという不幸岡本雄矢( 主に“トホホ短歌”を詠む「日本に(たぶん)ただ1人の歌人芸人」)

対談を終えて~岡本雄矢の反省文~

対談に遅刻、いざ参加しても、カメラの不具合で顔を見せることもできなかった岡本さんから、加藤さんへ、反省の短歌とエッセイが届きました! 加藤さんの返歌と併せてお楽しみください!

*   *   *

岡本雄矢より反省の一首とエッセイ

パソコンが あれ? パソコンが重くって 繋がんない どうしよう、あれ? あれ?

対談のお話をいただきました。

人生で初めての対談で、しかも相手は歌人で小説家の加藤千恵さんです。

自分が短歌を始める前から短歌を読んだり、昔から小説を読んだりしていた、憧れの方です。

聞きたいことはたくさんありますが、これを聞いていいのか? こんなことを聞いて失礼じゃないのか? などと色々考え、とても緊張をして当日を迎えました。

ライターさんと加藤千恵さんは東京、僕が札幌ということで、対談はオンラインで行われます。

僕は20分前にはパソコンの前に座り準備を始めました。

質問を整理したり、身なりは失礼にあたらないかなどをチェックしたり。

今思えば、ここでパソコンのチェックをしていなかったことが、悲劇のはじまりでした。

 

対談5分前。

さー回線を繋ごうとパソコンのマウスを握った僕は違和感を覚えます。

あれ? 今日、パソコンすごい重いな。

たしかに年季が入っているパソコンではありますが、いつもは正常に動きます。

しかし今日はすこぶる調子が悪いです。

マウスを動かしても矢印の動きはとても鈍く、クリックをしても反応がありません。

なんで今日に限って。

見ても見なくてもいいような動画を見てる時はあんなにスムーズに動くのに、依頼をいただいて、しかも憧れの人に会えるという時に、なんでこんなに動きが重いんですか。

そうこうしているうちに、対談の時刻になっています。

僕は編集者さんにパソコンが重いため遅れる旨を伝え、必死にパソコンと格闘します。

約束の時間を5分くらい過ぎた頃でしょうか。

なんとか回線が繋がり、加藤さんとライターさん、編集者さんが話す声が聞こえてきます。

「岡本さん、大丈夫ですかね?」

「北海道はまだ回線通じてないんですかね?」

そんな冗談が聞こえてきたので、僕は「そんな訳ないじゃないですか! 通じてますよ!」

と威勢よくツッコみました。

しかし反応はありません。

あれ、僕の声が届いてない。

あちらの声は聞こえるけど、僕の声はあちらに聞こえてない。

改善しようにもパソコンはいまだに重く、なかなか言うことを聞いてはくれません。

 

遅刻は15分ほどになっています。

編集者さんから、またも連絡が入ります。

「スマホで入ってみてはどうでしょう?」

編集者さん、僕ももちろんその考えはあるんですよ。

でも僕のスマホ、カメラが壊れてて、画面映らないんですよ。

せっかくの対談、お互いの顔を見て話したいじゃないですか。

しかし、そんなことも言ってられないくらいに、パソコンは重く、時間はどんどん進んでいきます。

約束の時間を30分くらい過ぎた時、僕はこれ以上は無理だと思い、パソコンを諦め、スマホで回線を繋ぎました。

画面には、クリアな画質の加藤さん、ライターさん、編集者さんと、最低の画質の僕が映っています。

そんな中でも、みなさんは優しく接してくれて、加藤さんに聞きたいことも聞かせてもらえて、対談は本当に充実した楽しいものになりました。

 

対談が終わった後に、僕は決めます。

パソコンとスマホを買い替えよう。

2つを買い替えるとなると、結構出費がかさみます。

あなたが僕の本を手にしてくれたなら、僕のお財布事情も少しだけ楽になるような気がします。

加藤千恵より返歌

繋がっていく 大丈夫 千キロの距離を飛び越えられる未来だ

(写真:iStock.com/PhonlamaiPhoto)

(構成/篠原知存 『小説幻冬』2022.5号より)

*   *   *

新刊『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』に続き、
全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』が文庫に!
読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる短歌&エッセイをお楽しみください。

 

関連書籍

岡本雄矢『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』

今日も世界の片隅で、ひとり膝を抱える僕とあなたのために。 不幸に愛された、トホホ名人……歌人芸人が身を切って綴る、“せつなさとおかしみ”、“短歌とエッセイ”のマリアージュ。

岡本雄矢『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』

昨日もトホホ、今日もトホホ。憂鬱だらけの毎日も、短歌に詠めば何かが変わる!「あの数ある自転車の中でただ1台倒れているのがそう僕のです」「さっきまで順調だったレジの列 急にもたつきだす僕の前」「ものすごい数のハトが集まっているおじさんに人は集まらない」他、105首の短歌とエッセイで綴る、ほろ苦さとおかしみに満ちた愛すべき日々。

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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)

著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。

バックナンバー

岡本雄矢 主に“トホホ短歌”を詠む「日本に(たぶん)ただ1人の歌人芸人」

詠み始めるとなんでも”トホホ短歌””不幸短歌”になってしまうという特徴を持つ、「日本にただ1人の歌人芸人」。1984年北海道生まれ。吉本興業所属。コンビ「スキンヘッドカメラ」で活動中。YouTubeで「芸人歌会」を開催。北海道新聞等で連載も。

短歌とエッセイを収録した初の著書『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』には、俵万智さん、穂村弘さん、板尾創路さんからアツい推薦文が寄せられた。

最新刊は『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』。

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