対談を終えて~岡本雄矢の反省文~
対談に遅刻、いざ参加しても、カメラの不具合で顔を見せることもできなかった岡本さんから、加藤さんへ、反省の短歌とエッセイが届きました! 加藤さんの返歌と併せてお楽しみください!
* * *
岡本雄矢より反省の一首とエッセイ
パソコンが あれ? パソコンが重くって 繋がんない どうしよう、あれ? あれ?
対談のお話をいただきました。
人生で初めての対談で、しかも相手は歌人で小説家の加藤千恵さんです。
自分が短歌を始める前から短歌を読んだり、昔から小説を読んだりしていた、憧れの方です。
聞きたいことはたくさんありますが、これを聞いていいのか? こんなことを聞いて失礼じゃないのか? などと色々考え、とても緊張をして当日を迎えました。
ライターさんと加藤千恵さんは東京、僕が札幌ということで、対談はオンラインで行われます。
僕は20分前にはパソコンの前に座り準備を始めました。
質問を整理したり、身なりは失礼にあたらないかなどをチェックしたり。
今思えば、ここでパソコンのチェックをしていなかったことが、悲劇のはじまりでした。
対談5分前。
さー回線を繋ごうとパソコンのマウスを握った僕は違和感を覚えます。
あれ? 今日、パソコンすごい重いな。
たしかに年季が入っているパソコンではありますが、いつもは正常に動きます。
しかし今日はすこぶる調子が悪いです。
マウスを動かしても矢印の動きはとても鈍く、クリックをしても反応がありません。
なんで今日に限って。
見ても見なくてもいいような動画を見てる時はあんなにスムーズに動くのに、依頼をいただいて、しかも憧れの人に会えるという時に、なんでこんなに動きが重いんですか。
そうこうしているうちに、対談の時刻になっています。
僕は編集者さんにパソコンが重いため遅れる旨を伝え、必死にパソコンと格闘します。
約束の時間を5分くらい過ぎた頃でしょうか。
なんとか回線が繋がり、加藤さんとライターさん、編集者さんが話す声が聞こえてきます。
「岡本さん、大丈夫ですかね?」
「北海道はまだ回線通じてないんですかね?」
そんな冗談が聞こえてきたので、僕は「そんな訳ないじゃないですか! 通じてますよ!」
と威勢よくツッコみました。
しかし反応はありません。
あれ、僕の声が届いてない。
あちらの声は聞こえるけど、僕の声はあちらに聞こえてない。
改善しようにもパソコンはいまだに重く、なかなか言うことを聞いてはくれません。
遅刻は15分ほどになっています。
編集者さんから、またも連絡が入ります。
「スマホで入ってみてはどうでしょう?」
編集者さん、僕ももちろんその考えはあるんですよ。
でも僕のスマホ、カメラが壊れてて、画面映らないんですよ。
せっかくの対談、お互いの顔を見て話したいじゃないですか。
しかし、そんなことも言ってられないくらいに、パソコンは重く、時間はどんどん進んでいきます。
約束の時間を30分くらい過ぎた時、僕はこれ以上は無理だと思い、パソコンを諦め、スマホで回線を繋ぎました。
画面には、クリアな画質の加藤さん、ライターさん、編集者さんと、最低の画質の僕が映っています。
そんな中でも、みなさんは優しく接してくれて、加藤さんに聞きたいことも聞かせてもらえて、対談は本当に充実した楽しいものになりました。
対談が終わった後に、僕は決めます。
パソコンとスマホを買い替えよう。
2つを買い替えるとなると、結構出費がかさみます。
あなたが僕の本を手にしてくれたなら、僕のお財布事情も少しだけ楽になるような気がします。
加藤千恵より返歌
繋がっていく 大丈夫 千キロの距離を飛び越えられる未来だ
(構成/篠原知存 『小説幻冬』2022.5号より)
* * *
新刊『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』に続き、
『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』が文庫に!
読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる短歌&エッセイをお楽しみください。
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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)
著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。
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