4月某日
吉田戦車のエッセイ『だって買っちゃった』(光文社知恵の森文庫¥860)を読みながら、
「なんてちょうどいいんだ!」と急に何かに気が付いた。
私は長年、小説もエッセイも「どうせ読むなら」派だった。
どうせ読むなら、ガッツリ読み応えがあって、どうせ読むなら感銘を受けるとか、大どんでん返しが待ってるとか、大きなサプライズがあるとか、自分の知らない世界の扉が開けるとか、知識が増えるとか、興味が広がるとか、そういうものを好んでいた。
安くはない金額を払って、そこそこの時間をかけて、どうせ読むなら、できるだけ大きなものを得たいというか、でかいリターンプリーズ! みたいな。
震えたい! 痺れたい! 悶えたいし驚きたい。泣きたい欲はないけど、結果的に泣くのは、それはそれで「私の感情が揺さぶられている!」感があって嫌いじゃない。感慨にふけりたいし、打ちのめされたい。ここではないどこかへ、知らない世界へ連れ出してくれる読書って素晴らしい! 大好き! この別世界があるから生きてこれたんだよー-! と思っていたし、今だって、そう思ってる。
でも、思ってはいるけど、正直ガッツリした本ばかり読むのは、なかなかしんどくなってきた、という自覚があった。
若い頃と違って集中力も続かないし、目も疲れるし、自分比だけど頭も回らなくなった。
気持ちはあっても、「んー、ちょっと今はやめとこう」とガッツリ本に手が出せないことが増えてきた。だからといって、柔らかくて軽くて厚さも中身も薄いだけの本は、手応えがないし読み終えたとき「で?」と思ってしまう。なんでこんな本に手を出してしまったのか、と虚しさだって残る。
そうした意味で『だって買っちゃった』は、ちょうど良かったのだ。漫画家である著者の買い物エッセイで、雑誌「FLASH」で連載されていた、こんなものをこんな理由で買ってみたらこんなでした、というだけの話が60回分(+おまけ)収録されているのだけれど、著者は男性で妻子がいて漫画家で、私とは全然重ならない趣味がある、という点がちょうど良いのだ。
女であることを諦めない! とか、母として妻として女としての私とか、整った心と体とか、無駄のない暮らしといった本を読んだときたまに感じる、追い込まれて息苦しくなることもない。
「万力」「ペン先」「ヒゲ剃り」「電気シェーバー」「バリカン」など、自分は絶対に一生買わないものも、「安価腕時計」「禅寺本」「アルマイト湯桶」「カエルの手」など、軽率にもちょっと欲しい……! と思ってしまったものもある。そういえば、最初に100均を意識したのっていつだっけなー、とか、え? そこにも布巾なの? ってか毎日そんな大量に洗うの? など、気楽に読めて、脳内がヘェーヘェーほぉーと与作化する。
役に立つとか自分のためになるわけじゃない(失礼)けど、読んでる間、終始自分の顔がニヤニヤしているのがわかる。ひとり飯や、ひとり呑みの友に、帰りの通勤電車や夜寝る前のベッド本に「ちょうど良い」。この自分好みのさじ加減を見つけるのは、案外難しいと思う。でもこの与作本に鼻が利くようになると、またガッツリ本の読書欲もわいてくる気がする。こだまみたいに唱えたいよ、へぇーへぇーほぉー。
@春の下読み祭追い込まれ中なので、新刊読めず。
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