祖母の心ない発言が多大なストレスに
人見知りやコミュニケーションが苦手で女性とうまく付き合えないということから始まり、女性嫌悪、ミソジニー、自傷癖、摂食障害、性同一性障害、回避性人格障害や境界性人格障害と数々の深刻な問題を抱えるまでこじらせている。そして、それを自覚して長年悩んでいる。
どうして、そのような状態になってしまったのか。
「二歳で父親が交通事故死して、それからめちゃくちゃです。最初は父方の家庭にいて、イザコザがあって母とマンションに引っ越した。それから母と母方の祖父母と暮らすようになった。九歳のときに祖父が亡くなって。母は保育士だったので忙しくて、祖母に育てられた。祖母から毎日ねちねち注意や否定される日々で、例えば自転車で走って転んだら“あんた物を壊す天才やな”とか、祖母の意向で小一から塾に通わされて“他の子はピアノしてて、野球して、勉強もして。でも、あんた遊んでいるだけやん”とか。祖母に他人と比べられて攻撃されて、卑屈な感情が生まれて、十歳の頃には男子からイジメを受けるようなタイプになっていた。たぶん祖母から言われた一言、一言で自信を失って、怯えるようになって人によっては流せることでも傷つくようになった気がする。今ならば会社が嫌なら転職とか地元が嫌なら海外とか、いろんな手段あるけど、当時は祖母と暮らす家庭という空間がすべてだったので逃げ場がなかった。その感覚を今でも引きずって、自分では何もできないという感覚を持っている。
虐待やネグレクトではなく、祖母の心ない一言がストレスやダメージとなって、長い時間をかけて蓄積されて壊れてしまったようだ。自信がなくなって言葉を発しなくなり、クラスで浮くようになって、小さなイジメに遭っている。
「中一のバレンタインのとき、義理チョコを食べている男子がいた。その後に体育があって、教師が“チョコの匂いする!”って怒りだした。
そのときチョコを食べていた男子が“これは●●の匂いだ”って僕の名前をいって責任転嫁しようとしたり。あとは中二のとき。小学校時代に仲良しだった女の子が中学になって悪い道に走った。その子に部活に行く途中で“昔から好きだった”と言われたんです。それが翌日、“告白してないのに、告白したって言いふらしている”っていうことになっていた。僕が一方的に悪いって。その女の子から“お前なんか誰も好きにならねーよ”って恫喝されて絶望しました」
記憶に刻まれている“事件”は、おそらく誰にでも一つや二つ経験があるだろう些細なことばかりだった。普通の人が少しの時間が経てば忘れるようなことを、よく覚えている。一つ一つが傷として刻まれて、二十年近くが経っている現在も引きづっているようにみえた。
「頭を拳銃で撃たれたような感覚です。生きる価値がないみたいな。引きずりますね。自分が悪いって徹底的に引きづる。そうなってしまう一番の原因は自分の外見がブサイクであり、バカで無能でつまらない人間であることです。外見にまったく自信がなくて顔とか骨格とか、性格も最悪だし、考えれば考えるほど絶望的になって、自分みたいな人間は誰も相手にしない、仲良くなるなんて相手に申し訳がない、そんな風に思ってしまう。恋愛や性的な関係とか、人間関係とか。男子からは“こいつ見た目ダメ、ダサい奴だから軽んじていい”という評価で、女子からは拒否。生理的に受けつけないって。男女両方から相手にされない、生きる価値がないみたいな感じです」
思いだしたように高校一年のとき、クラスで起こった話をしだした。
「高一のとき、罰ゲーム告白されたとか。モテなさそうな奴いたらターゲットにして、異性が嘘の告白をして楽しむみたいな遊びというか、イジメみたいなのが流行っていた。ターゲットにされたとき、怪しいと思ったけど、言われているほうはわからない。半分真に受けて緊張していたら、クラスのみんなが大笑いしていた。屈辱ですね。男子から女子にもあって、可愛くない女子にわざと告白して反応を楽しんだり。他人を傷つけるゲームで人間そのものを信用できなくなった」
仲が良かったはずの女子に恫喝されたこと、嘘の告白をされて大笑いされたことが原因となって、女性に恐怖と猜疑心を覚えている。女性のことは本当は好きで仲良くしたいのに話せない。外見に自信がないので“どうせ心の中でバカにしている、見下している”と自己完結するようになり、女性だけでなく人間という存在自体すらも嫌悪するようになった。
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ルポ中年童貞
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