●続けていくと、好色一代女みたいになっちゃいそう
鈴木 いろいろな愛情表現の形があると思うんです。例えば作品で、恋愛表現がねじ曲がった女の人を書くときの着想はどこから得ているんですか? お友達をモデルにしたり?
唯川 そういうこともあるけれど、正直、鈴木さんのような女性をうまく書けるかというと、難しい。自分のなかに少しでも同じ芽がないと、それらしきことしか書けないから。「ただただ好き。あなたのためならなんでもできる」じゃ小説にならない。女性が男と出会って戦い始めるとか、変化をしないと面白くないから、そういう人は徹底的には書けない。鈴木さんのほしいものがよくわからないな。
鈴木 多分、他の女の人に対して優越感を持ちたいんです。私が好きになる人は周りに浮気相手がいるんだけど、その子たちは所詮愛人で、本妻は私だと感じたい。
唯川 うーん、違うところに目を向けてみたら?
鈴木 アハハ(笑)。歳を重ねていくと変わるのかなあ。男性の好みって変わりましたか?
唯川 若い頃はかっこよくて背が高くて、と思っていたけれど、そういう条件が全部なくなって、自分に分相応な人が一番うまくいくと思うようになった。
鈴木 最後に何が残りました?
唯川 この人と結婚しなくても、一生いい男友達としてやっていけるかなっていう部分。
鈴木 それはうちのお母さんも言ってました。「永遠の友情を誓える相手と結婚するといい」って。
唯川 でも、鈴木さんは一生このまま意志を貫き通してもいいと思うよ。男の人に全面的に自分を捧げて死んでいくっていうのもちょっとかっこいい。
鈴木 常に自分にとって、二種類の男が存在するんです。私が100%尽くす男と、自分が100%優位に立つサブの男と。サブの男はお金をくれるとか、物を買ってくれるとか、家賃を出してくれる人。それを続けていくと、好色一代女みたいになっちゃいそうで……。
唯川 それはそれでかっこいいじゃない。あなたに100%尽くす男への愛情はないの?
鈴木 ないです。
唯川 福沢諭吉が好きなだけ?
鈴木 まあ、そうですね。その分、自分が好きな男にはお金をじゃぶじゃぶ使ってました。
唯川 今は違うの?
鈴木 今は常識的な範囲内で(笑)。でもその精神は残っていて、好きな男にはなんでもさせてあげます。
唯川 もらった分使わないと、自分のなかで貸借が成り立たないと思ってるのかもね。
鈴木 でも、普通に幸せにもなりたいと思ってるんです。