pha(ファ)さんとクマムシにはすごくいろんな共通点があるんです―ー京大卒で日本一有名なニートとして知られ、先ごろ『持たない幸福論――働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』(幻冬舎)を刊行したphaさんをそう評するのは、この世で最強の生物といわれるクマムシの研究者で、『クマムシ研究日誌――地上最強生物に恋して』(東海大学出版部)を刊行した堀川大樹さん。
ともに1978年生まれで、既成の価値観にとらわれない新しいライフスタイルの開拓者であるお二人が、これからの時代を楽しくのびやかに生きる”クマムシ的生存戦略”について語り合いました。最終回は、「ニートは社会のフリーライダーか?」問題に斬り込みます。
(構成 小沼朝生)
◆ニッチなクマムシ研究
pha 前回はいかにクマムシがニッチかということで。
堀川 そうなんです。だから僕も見習って、ニッチな分野を研究してるんですよ。僕がクマムシを見て「すごい」と思って、研究するかどうか考えてた時期のことですけど、実はちょっと不安があったんですね。こんなにおもしろい生き物だから、たぶんたくさん研究者がいて、かなり研究されてるんだろうなと思ってたんです。ところが、検索したらほとんど研究されてなかった。「あ、これはニッチだ」と飛びつきました。僕もニッチが好きなので。ブログを始めたのも、研究者が実名で研究内容を分かりやすく書いてるブログって全然なかったから。書いたら出版社から執筆のオファーが来るのかなと思ってたら、やっぱり来たんですよね(笑)。
pha 研究者としては新しいというか、あんまりないですよね。でも、これからはそういう人が増えるかもしれませんね。
堀川 どうでしょうか。実はあまり出てこないかもしれませんね。研究者って互いの目を結構気にしたりしますからね。ネットなどで積極的に発信してアピールするのもひとつの手だと思うんですが、目立つことで逆に就職に不利になるのではないかと考える若手研究者も多いようです。すごく狭いっていうか、閉鎖的な世界なので。例えば僕はもう5年ぐらいブログやってますけど、その間に新しく実名でブログを始めた研究者ってあまりいないんじゃないかな。
pha 研究者の世界も生き残りが厳しいし、これからは大学も少子化とかで縮んでいったりするし、それだったりそういう別の道というか、ブログか何かやっていかなきゃみたいな感じも増えてくるんじゃないですかね。クマムシの研究者って、世界的には何人ぐらいいらっしゃるんですか?
堀川 実は昨日まで国際クマムシ学会に行ってきたんですよ。3年に1回の。それでイタリアに行ってたんですけど、今回は史上最多で100人来ました。世界中から集まって100人ですから、相当少ないです。
pha でも、おもしろそうですね。いろんな国の人が集まるわけですからね。共通言語もありますし。
堀川 共通言語はクマムシ(笑)。
pha 「クマムシのここがすごい」みたいな話を(笑)。
堀川 そうそう。「ここの爪が」みたいな(笑)。
pha 生態系の中での位置づけというか、役割みたいなのってあるんですか?
堀川 まあ分解者っていうか、エサを食べて、糞で土や苔を耕すみたいな感じですね。
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