直接聞いた一言一言が堆積していった
麻木 私がこの本を読んでいいなと思ったのは、「ネット時代の陰」的なものを感じなかったこと。もちろん運動の告知とかにはネットをフルに利用してたわけだけど、根本では、地域のコミュニティの人たちと直接会って話してる感じがとても伝わってきた。
國分 それはすごく嬉しいです。いろいろな人と実際に言葉を交わした経験は本当に貴重で、たとえば僕は運動の目的として、道路建設で失われる雑木林のことばっかり言ってたんです。でもあるとき、自分の家を守るために運動している方の言葉を聞いて、ハッと気づいた。「あ、俺、この人のことを考えてなかった」って。それはツイッターで意見をもらうのとは、やっぱり違うんですよね。そうやって、実際に面と向かって話をした方々の一言一言が心の中に重く堆積していったことは、外に向けて語るための言葉を紡いでいくにあたって大きな支えになりました。(第3回に続く)
*この対談は全4回です。次回〈國分さんが学者をやめて運動家になっちゃうのかと心配だった〉は11月29日掲載予定です