鍛えた肉体は金で買えない
私は職業柄、筋肉のついた体をしている。
私がここまで筋肉を育てるには、10年以上かかっている。昨日や今日、トレーニングを始めたわけではない。10代半ばから、ほとんど毎日欠かさずトレーニングをして、その結果としてこの体がある。
筋肉は、洋服や靴を買うように、お金を出せばその場で手に入るというわけにはいかない。
また一度手に入れても、ずっと自分のものになるわけではない。年齢とともに筋肉は衰えていくし、脂肪はつきやすくなる。維持するためには、それまで以上のトレーニングを続けていく必要がある。
いまは金さえ出せば何でも買えると思われている時代だ。「人の心も金で買える」という堀江貴文氏の発言は、多くの非難は浴びたものの、時代の空気をよく表していた。
「金さえあれば何でも買える」という発想は、人間の思考を短絡的にしている。そのことは、世の中で起こるいろいろな事件を見ていても感じられる。
結果をすぐ求める。努力しなければ手に入らないと分かると、すぐあきらめる。簡単に絶望して極端な行動に走る。長いスパンで物事を考えたり、他人の気持ちを推し量ったりする余裕が持てなくなっているのだ。
トレーニング雑誌でさえ、最近は「このトレーニングをすれば1週間で筋肉がつく」といった短絡(たんらく)的な記事が増えている。しかし、そんなことはありえない。
プロテインを飲んだからといって、すぐに筋肉が倍になるわけではない。
どんな優秀なトレーナーでも、「お金には糸目をつけないから、明日までに筋肉をつけてくれ」と頼まれても絶対に無理だ。
トレーニングは、短絡的なことばかりがもてはやされている現代において、数少ない、短絡的ではないものだ。
本当にトレーニングの意味を理解したら、「すぐに成果が上がる」「すぐに儲かる」といったうさんくさい謳(うた)い文句に心惹かれたり、お金ですべて解決できるような思想に惑わされそうになったりしても、「いや、そうじゃないな」と気づくことができる。
「生命」や「身体」に関するものは、すべてプロセスを省略することができない。いずれは科学で短縮されるのかもしれないが、いまのところ赤ん坊が生まれるまでにはどうしても10カ月かかる。5カ月に縮めたいといっても無理だ。
農業なども、そういう気の長い仕事である。技術で促成栽培するにも限度がある。米も野菜も果物も、多くの農作物は収穫までに長い時間を必要とする。
プロセスの重要性、粛々(しゅくしゅく)と努力を積み重ねることの重大さに気づくだけでも、トレーニングをする意味はある。
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『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』 奥田昌子
『みるみる痩せる!!堀江式ライザップ』 堀江貴文
『超ヨガ』 龍村修
『50歳からでも遅くない!ミヤネ式らくらくボディメイク法』 宮根誠司
『老いない体』 寺門琢己
『人生改造 生活習慣病を防ぐ本』 日野原重明
『運動嫌いほどやせられる』 坂詰真二
『腹筋を割る技術』 吉田輝幸
『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』 山本ケイイチ
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