KAGRA完成でどんな謎が解けるのか?
アインシュタインの予言どおりに重力が存在し、それをレーザー干渉計で検出できることは、米国のLIGOが見事に証明してくれました。ですから、もはや初の重力波直接検出はKAGRAの目的ではありません。重力波を使って宇宙のことを詳しく調べるのが、この実験に課せられた使命です。
では、KAGRAでは、どのような天体現象からの重力波を検出することが期待されているのでしょうか。これからの重力波研究は、そこが重要な問題になります。
重力波源になり得る天体現象は、第一章でも紹介しました。超新星爆発、中性子星連星やブラックホール連星の合体などです。KAGRAも、それらの観測を目指していることはいうまでもありません。
問題は、KAGRAの感度でどれぐらい遠くからの重力波を「聞く」ことができるかという点です。より遠くからの重力波をキャッチできるだけの感度があれば、その効果は距離の3乗に比例して大きくなる。それだけ多くのイベントを観測できるわけです。
たとえば、中性子星連星の合体。これはKAGRAにとっていちばん重要なターゲットのひとつと目されています。ただし中性子星連星はこれまでに10個程度しか見つかっていないので、その合体がどれくらいの頻度で発生するのかは正確にはわかりません。いまのところは、ひとつの銀河で1万年に1回ぐらいの頻度で起こると考えられています。
だとすると、重力波を検出できるエリアに1万個の銀河があれば、1年に1回のペースで中性子星連星の合体を観測できることになります。KAGRAが目指している重力波検出レンジは、およそ7億光年。その範囲にある銀河の数は、10万個は下りません。そこで1万年に1回のイベントがあるなら、KAGRAでは中性子星連星の合体を1年に10回くらい観測できる計算になります。
発生頻度が不確定なので、検出頻度は1年に1回になってしまう可能性もあれば、1年に100回になる可能性もあるのですが、中性子星連星の合体をコンスタントに観測できるようになると、たとえば、これまで大きな謎だった、「ガンマ線バースト」という現象の正体を解明できるかもしれません。
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KAGRAが稼働すれば、これまで予想もしなかった「謎の天体」が発見されるかも、とも期待されています。KAGRAが切り開く重力波天文学世界には、私たちを驚かせるどんな興奮が待っているのでしょうか? 続きは『重力波とは何か――アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』でお読みいただけると幸いです。
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