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70歳、はじめての男独り暮らし

2018.01.18 公開 ポスト

【新春特別企画】70歳、はじめての同級生対談【前編】

死に方はもう決めている西田輝夫(医学博士)

70迎えて、死生観が変わった

 本に「死生観が変わった」って書いておられるでしょ? 確かに、僕は家内は生きているけど、それでも70ぐらいになるともう息子たちは当然大人だし、孫もいるし。そうすると別に、どうしても生きていなきゃいかん、というのは薄くなるよね。子どもが小さい時はやっぱり自分が死んじゃまずいと。凄く忙しくて子どもの面倒なんか全然見られなかったんだけど、それでも一応そう思っているじゃない。やっぱり年齢で多少そういう感じが変わってくるよね。

西田 そう、変わってくる。

 僕は家内が亡くなったりしたら、ますますそういうことはあるのかなと思うな。ただ、どんどんそっちの方に落ち込んでいっちゃったらまずい。

西田 あと、奥さんが残されると、一般論として、収入的に奥さんのほうが少ないでしょう。これは世間の女性方に失礼かもしれないけど。だから、僕が先に死んだらあと妻が死ぬまで生きていけるようにしてやらないといけない、そういう金銭的な面の構えも必要。

 それから、僕も妻も、前の連れ合いとの子供がいるので、死んだあと決してトラブルが起こらないように、公正証書できちんとそこのところをはっきりしてと、そういうことをした。妻のお骨も二つに分けて、向こうは向こうで。

 へえ、奥さまのお骨を二ヶ所に?

西田 うん。前のご主人のお墓に半分入って、そこを向こうの子どもたちはお参りすると。で、半分はうちの墓に入れて、僕はこっちでお参りするという。もうはっきりそれで分けた。そうしたら、向こうが例えば色々な仏事をしようがしようまいが……彼らは考え方も若いし、仏教的なやり方がめちゃくちゃなところもあるけど、それは向こうのことと割り切って、口を挟まなくていいでしょ。

 でも、そうやっていくと誰もいないんですね、僕のあとに。そうしたらもう今日死んでもいいし、5年先に死んでもいいし。そういう意味での死生観は変わりましたね。あとは、仕事は自分なりにやったという気持ちがあるから、もういいでしょやらなくてもって。坂さんだってそうだよね。

坂 うん、もう十分働いたという気はするね。

西田 20歳頃にお互い夢を語り合った、あの頃に戻って考えたら、俺たちは十分やったよな、と。もういいよな、もう許して、もうこのままサボってもいいよな、という気持ちが片一方であるわけ。でも患者さんを見ていたら、いや、まだまだこの人のためにしないといけないとか、あるいは顧問にされたりして、まだ僕を必要とする場所はあるんだな、とか。そこのギャップはあるけど、基本的にいつでも逝っていいという感じなんだ。

 坂さんの方は、奥さまがお元気だと、そこが引っかかってくるわけだよね。あと、実の子どもさんとお孫さんとか、全部やっぱり気になるだろうけど、僕の場合、ある意味で天涯孤独みたいな感じだから、もういつでもいいよなと。

関連書籍

西田輝夫『70歳、はじめての男独り暮らし おまけ人生も、また楽し』

定年後、癌で逝った妻。 淋しい、そして何ひとつできない家事……。 人生100年時代の、男の生き方がここにある。 抱腹絶倒、もらい泣き!? 「このまま私はボケるのか?」定年後の独り暮らしを描く、笑えて泣ける珠玉のエッセイ! 古希(70歳)を迎えた元大学教授が、愛妻を癌で亡くした。悲しみを癒す間もないままひとりぼっちの生活が始まるが、料理も洗濯も掃除も、すべてが初めてで悪戦苦闘。さらに孤独にも苦しめられるが、男はめげずに生き抜く方法を懸命に探す。「格好よく、愉しく生きるのよ」妻の遺言を胸に抱いて――。 <目次> はじめに 第一章 家事に殺される!? 〜オトコ、はじめての家事〜 第二章 男やもめが生きぬくための7つのルール 第三章 妻を亡くして 〜オトコ心の変化〜 第四章 妻がくれたもの 〜大きな不幸の先に大きな幸せが待つ〜 おわりに

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70歳、はじめての男独り暮らし

定年後、癌で妻を亡くした元・大学教授が語る、人生100年時代の男の生き方。

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西田輝夫 医学博士

1947年生まれ、大阪府出身。1971年大阪大学医学部卒業後、米国ボストンのスケペンス眼科研究所留学などを経て、1993年、山口大学医学部眼科学教室教授に就任。2001年米国角膜学会にて、日本人としては19年ぶり2人目となるカストロヴィエホ・メダル受賞する。2010年からは山口大学理事・副学長を務めた。2013年に退任後、旅行をゆっくりと楽しもうとした矢先、長年連れ添った妻が子宮頸がんのため帰らぬ人となる。現在は、医療法人松井医仁会大島眼科病院監事、(公財)日本アイバンク協会常務理事などを務めながら、妻が最後の数か月で教えてくれた家事技術をもとに、懸命に独り暮らしの日々を送っている。

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