ロマンティックラブを信じるって宗教と同じ
植島 そうそう、官能の話です。
湯山 そうでした(笑)。
植島 官能の話をしだすと止まらなくなるんですけど、僕はこの本の中で、これからは女性が愛人を持ったり、人に官能全開で楽しんだらいいっていうことを書いてるわけです。でも、社会の風当たりは、ちょっと保守的になっていますよね。3.11もあったり、より官能、快楽への抵抗が強くなった気がするんですけどね。
湯山 そうですよね。本でも書かれていますが、家族っていう理想的な、まあヴィクトリア時代に確立したモラルですよね、女の人は貞節を持って一人の愛した男と結ばれて、できれば、その愛した男一人だけに自分の官能を開いてもらいたい。そして、ずっと愛し合うみたいなことをみんな信じてますよね。でも実際は、ほぼ崩れてるじゃないですか。なのに、そこをもう一回信じてみようって、何か変ですよね。どうしてそう思えるのかな?
私はそのロマンティックラブを信じるのはほとんど宗教だと思っています。ロマンティックラブ信者(笑)。信じる信じないは勝手なので、そういう宗教に入るって決めた人はいいと思うんだけど、それを信じるといいことがあるかといえば、そんなことはない。
矢口真理事件に見る女の怒り
植島 たとえば、矢口真里の事件とかあったじゃないですか。
湯山 ありましたねー。
植島 自分の寝室に男を連れ込むなんてって、テレビ全局が大批判でしたね。でも、自分の彼とのベッドに他の男を連れ込むなんて、最大の悦楽だろうなと思った。
湯山 私もいいなと思うんですよ(笑)。燃えただろうねって。
植島 でも、あそこまでヒステリックに批判することに、僕はちょっと抵抗感じたんですね。もしあれが、ちょっと違った、中谷美紀みたいな僕の好きな女優さんだったりしたら、表に立って、弁護してやろうと思うんですが(笑)。
湯山 私は、あれは女たちのまた別種の怒りだと思ってます。彼女はね、ママドルでメシを食っていたわけです。ママドルというのは、大衆が思うところの、いい家庭で、いい夫と一緒に、子どもがいるっていうことを演じ続けることでお金貰ってるってことですよ。だったら、それを貫いてくれよ、っていう感じ。だからね、職業違反みたいな感じでみんな怒った。
植島 でも、あのニュースは、矢口真里でなければけっこういい刺激的なニュースでしょう。
湯山 これをもし恋多き女優がやったとすると違う反応だったかもしれない。しょうがねえな、芸の肥やしだろうなっていう。でも矢口真理みたいなそこでメシを食っている人がやったから、女は許さなかったのよ。
植島 そうそう。だけど、何であんなにヒステリックになるかっていうと、やっぱり自分はできない。出会いがないか、魅力がないか、何か知らないけども、自分にはそういう旦那にウソをついてまで他の男の人とやるっていうチャンスがない。だけど、やってるやつがいるのがすごい癪に障るの。羨ましい。そういういろんな感情が絡まっていて、それで何かワーッとヒステリックになるんだろうなと思うんですよね。
湯山 そうですね。やっぱり日本は、横並びのみんな一緒の文化ですからね。インターネットの時代になって、さらに恐ろしい相互監視社会になってきましたよね。前だったら、やってしまって黙っていればいいんだけど、今は、やったことに関して絶対書かれて、それが永久に残ってしまう。だから、人から何も言われないような人生、ディスられないような人生を選びがちですよね。でも、それはイヤですよねえ。
植島 湯山さんと話してるとさ、何か僕なんか息がもつかなっていう感じ(笑)。
湯山 すみません。
植島 すごい速い平泳ぎやってる感じですよね。
湯山 わははは。早口だよね。大学の授業でもそう言われるんですけどね。「まあ、スピードラーニングだと思って、とりあえず聞いてなさい」と答えています(笑)。
植島 (笑)。
湯山 それにしても、みんな、安全安心って大好きですよね。高度資本主義社会って、絶対、安全安心に突き進むんですけれども、でも、そことうまく付き合わなきゃダメですよね。安全安心で行くんだったら、人生はずっと安全安心でしょうけど、たぶん生きてて、快感なんて一回も感じることなく死ぬんだと思う。
植島 やっぱりちょっと危険なこととか、楽しいことって、何かね、バイアスがかかったことは必要ですからね。
湯山 ほんとですよね。
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