◆50年も前に決まった計画をなぜ覆せないのか?
上野 というわけで踏んだり蹴ったりの目に遭われたようですが、今のご発言のなかに気になるところがありました。「ほんの偶然からこの運動を応援することになった」の「応援」という言葉。傍観者的ですよね。小平市民として、当事者として関わったということではないんでしょうか。
國分 そのとき当事者になった、ということだと思いますね。
上野 素晴らしい! そのとき初めて「当事者になった」。それこそ当事者主権ですね。「当事者である」のではなく、「当事者になる」ことが大事です。傍観者から当事者になったわけですね。
素朴な疑問として、50年前にいったん決めたことが覆せないとおっしゃるけれど、覆った決定は山ほどあります。八ツ場(やんば)ダムの計画は覆りましたよね。諫早(いさはや)の水門も。
國分 都市計画の場合は、ありますかね? たぶんないと思います。都市計画というのは非常に特殊で、いったん決めたら止まらない。たとえばアメリカではサンセット方式といって、公共事業の計画が、一定期間実施されないと自動的に中止になるという制度があるんですけど、日本はその方式をとっていないですし。
上野 住民投票って、議会も動いてくれない、首長も言うことを聞かない、役所も木で鼻をくくったような対応だっていうときの最後の手段ですが、小平市の場合、その前にやれることはなかったのでしょうか。たとえば新しく工事を開始するには、予算をつけないといけませんよね。ということは当然、議会で予算の審議があるわけで、その予算を否決したら計画はどう考えたって実行できません。だから、まず議会にロビー活動して予算を通させないことはできる。小平市から出てる都議もいるでしょ?
國分 まあ、いちおう出てますね。
上野 その都議に「道路予算を通したら、次の当選はないぞ」と脅して有権者の影響力を行使することもできます。そういうことはおやりになったんですか。
國分 僕は、住民投票運動が始まってから直接関わるようになったので、それ以前のことはほとんど知らないんです。知らないというか、関わっていないんですね。急いで住民投票請求をすることになったのは、事業認可が迫ってると言われたからです。都が国交省に申請して事業認可がおりちゃうとほぼ間違いなく覆せない、っていう事情があったんですね。
上野 事業認可がおりてからだって、あらためて予算を取らなきゃ動かないんですけどね。
國分 はい。認可は8月におりてしまったので、今は、実際の執行を中止させることを目指しているところです。
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