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上野千鶴子×國分功一郎対談「上野先生、民主主義はお好きですか?」

2014.01.31 公開 ポスト

第1回

民主主義についてよく語られる時代は民主主義危機の時代上野千鶴子/國分功一郎

◆50年も前に決まった計画をなぜ覆せないのか?

上野 というわけで踏んだり蹴ったりの目に遭われたようですが、今のご発言のなかに気になるところがありました。「ほんの偶然からこの運動を応援することになった」の「応援」という言葉。傍観者的ですよね。小平市民として、当事者として関わったということではないんでしょうか。

國分 そのとき当事者になった、ということだと思いますね。

上野 素晴らしい! そのとき初めて「当事者になった」。それこそ当事者主権ですね。「当事者である」のではなく、「当事者になる」ことが大事です。傍観者から当事者になったわけですね。

 素朴な疑問として、50年前にいったん決めたことが覆せないとおっしゃるけれど、覆った決定は山ほどあります。八ツ場(やんば)ダムの計画は覆りましたよね。諫早(いさはや)の水門も。

「この問題に応えることができなければ、自分がやっている哲学など嘘だ」と思った國分さんが、編集者の提案より2カ月も早い締切を自らに課して書き上げました。帯の写真は道路計画によって伐採されようとしている小平の雑木林。

國分 都市計画の場合は、ありますかね? たぶんないと思います。都市計画というのは非常に特殊で、いったん決めたら止まらない。たとえばアメリカではサンセット方式といって、公共事業の計画が、一定期間実施されないと自動的に中止になるという制度があるんですけど、日本はその方式をとっていないですし。

上野 住民投票って、議会も動いてくれない、首長も言うことを聞かない、役所も木で鼻をくくったような対応だっていうときの最後の手段ですが、小平市の場合、その前にやれることはなかったのでしょうか。たとえば新しく工事を開始するには、予算をつけないといけませんよね。ということは当然、議会で予算の審議があるわけで、その予算を否決したら計画はどう考えたって実行できません。だから、まず議会にロビー活動して予算を通させないことはできる。小平市から出てる都議もいるでしょ? 

國分 まあ、いちおう出てますね。

上野 その都議に「道路予算を通したら、次の当選はないぞ」と脅して有権者の影響力を行使することもできます。そういうことはおやりになったんですか。
國分 僕は、住民投票運動が始まってから直接関わるようになったので、それ以前のことはほとんど知らないんです。知らないというか、関わっていないんですね。急いで住民投票請求をすることになったのは、事業認可が迫ってると言われたからです。都が国交省に申請して事業認可がおりちゃうとほぼ間違いなく覆せない、っていう事情があったんですね。

上野 事業認可がおりてからだって、あらためて予算を取らなきゃ動かないんですけどね。

國分 はい。認可は8月におりてしまったので、今は、実際の執行を中止させることを目指しているところです。

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上野千鶴子×國分功一郎対談「上野先生、民主主義はお好きですか?」

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上野千鶴子

社会学者・立命館大学特別招聘教授・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。『上野千鶴子が文学を社会学する』、『差異の政治学』、『おひとりさまの老後』、『女ぎらい』、『不惑のフェミニズム』、『ケアの社会学』、『女たちのサバイバル作戦』、『上野千鶴子の選憲論』、『発情装置 新版』、『上野千鶴子のサバイバル語録』など著書多数。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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