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「日本一有名なニート」と「クマムシ博士」の、ニッチ的生き方のすすめ

2020.02.20 公開 ポスト

【人生がつらくなったら生物に学ぶ】クマムシ的寛容生存戦力が不寛容なネット社会を生きやすくする【再掲】pha/堀川大樹

放っておくと孤立するからつながる機会を作る

堀川 他人と一緒に暮らすことのストレスとかはないんですか?

pha  たまにありますけどね。でも、一人よりはましかなと。独り暮らしがすごく閉じててつまらない感じがあって、つらかったんです。だから寮みたいに周りにゆるく人がいる方がいいと思ってて。シェアハウスも自分の個室はあって、一人になりたい時はそこにいればいいですし。キッチンやリビングは共有ですから、人に会いたい時はそっちに行って、こもりたい時はこもってみたいな感じで。もっとも、個室で一人でいることの方が多いですけどね。

堀川 ニートというと閉じられている印象がありますけど、phaさんの場合は開かれてますよね。

pha  つながりを維持するのは大事ですよね。だから、仕事をしていなくても、他人とのつながりとかをうまく作れたらいいなと思ってます。

堀川 僕も2年間ぐらい部屋をシェアしてた時期があるんですよ。アメリカに住んでたんですけど、シリコンバレーってむちゃくちゃ家賃が高いので、半強制的にルームシェアせざるを得ないんですよね。2年間に確か3回ぐらい部屋を替わってるんですが、合う人は合うんだけど、合わない人とは本当に合わない。かなりのストレスでした。

pha  変な人が多かったんですか?

堀川 ええ。ルームシェアはしてなかったですけど、部屋を探している段階で、すごいやばそうな人がいたり。実際に住んだ人たちとの生活も辛い部分が多かったですね。

pha  何が合わなかったんですかね。

堀川 まず何を話せばいいのか分からなかった。気まずい。言語の壁もあるんですけど、なんか合わないんです。

pha  アメリカ人?

堀川 アメリカ人、ロシア人、香港人などなど。まあ、合わない人は日本人でも合わないでしょうけど。

pha  堀川さんて、あんまり気まずくならなさそうですけどね。

堀川 いや、なりますよ。そういう経験があって、いまはだいぶ鈍感になってきてると思うんですけど。当時は日本だけで30年間生きてきたから、ちょっと神経質な感じではあったんでしょうね。一般的な日本人のレベルってけっこう神経質なんですよ。そのあとアメリカやフランスに行ったりして、だいぶ鈍感になった気が。だから、天性で鈍感って本当にすごいなって思います。あと、ご著書を読んでいて意外だったのが、いろんなイベントを主催されたりしていますよね。僕はそういうのがすごく苦手なんです。やることもあるんですけど、すごく疲れる。

pha  まあ疲れますよね。

堀川 飲み会一つにしても「今度やろう」とか言っておいて、結局何もしないでそのままズルズル行っちゃうじゃないですか。でも、phaさんてわりと小まめにイベントとかやられてるんですよね。

pha  逆にニートになってからそういうのをやるようになったというか、放っておくとつながりがなくなるからっていうのはありますね。会社に勤めてる時はそんなのやらなかったですし。ニートだと放っておくとけっこう毎日孤立するから、そういう機会をあえて作るというか。まあ、機会を作ってもわりとほったらかしというか、日時だけ決めてあとは適当になあなあだったりしますけど。

堀川 でも、人を集めてイベントやったりっていうのも、仕事と言えば仕事のような気がするんですけど、やっぱり会社に勤めることとは違うんですか。

pha  そうですね。人を集めたりとかは自分の気分次第でやればいいし、せいぜい月1、2回くらいとかですが、仕事は毎日あるわけじゃないですか。毎日決まった時間に行くみたいなのがすごく辛い。決まった時間に行って、途中で帰っちゃいけないとか。自分のイベントだったら途中で帰ってもいいし、わりと行かなかったりとか、「ちょっと今日だるいので」とかって帰ることもあったりするので(笑)。

関連書籍

pha『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』

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pha

1978年生まれ。大阪府出身。京都大学卒業後、就職したものの働きたくなくて社内ニートになる。2007年に退職して上京。定職につかず「ニート」を名乗りつつ、ネットの仲間を集めてシェアハウスを作る。2019年にシェアハウスを解散して、一人暮らしに。著書は『持たない幸福論』『がんばらない練習』『どこでもいいからどこかへ行きたい』(いずれも幻冬舎)、『しないことリスト』(大和書房)、『人生の土台となる読書 』(ダイヤモンド社)など多数。現在は、文筆活動を行いながら、東京・高円寺の書店、蟹ブックスでスタッフとして勤務している。Xアカウント:@pha

 

堀川大樹

1978年生まれ。北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了。地球科学博士。NASA Ames Research center研究員、AXAポスドクフェロー、パリ第五大学および仏国立衛生医学研究所研究員を経て、慶應義塾大学SFC上席所員。著書に『クマムシ博士の「最強生物」学講座 私が愛した生きものたち』(新潮社)、『クマムシ研究日誌 地上最強生物に恋して』(東海大学出版部)がある。

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